皆さんは「巧緻性(こうちせい)」という言葉は聞いたことがありますか?巧緻性とは平たく言えば手先の器用さのことです。
特に小学校受験の場面で問われることが多い能力なのですが、聞きなれない言葉のため下記のような疑問を抱えているのではないでしょうか。
- そもそも巧緻性ってどういうもの?
- なぜ巧緻性が高いと良いの?
- どうすれば巧緻性が身につくの?
この記事では保護者の皆さんさがお子さんの「巧緻性」をより伸ばしてあげられるように、下記の順番で解説していきます。
きっと、最後まで読んでいただければ巧緻性の意味や特徴が分かり、お子さまの潜在能力を伸ばしてあげるのに役立ちます。
ぜひ、お子さまの巧緻性を幼児期から高め、いろいろな能力の可能性を伸ばしてあげてください。
巧緻性(こうちせい)とは
小学校受験でよく用いられる巧緻性の試験ですが、そもそも巧緻性とはどんな能力なのでしょうか?
一般的に手指の器用さを指すことが多い
そもそも巧緻とは「精密・緻密」という意味を指します。一般的に精密なことをするときには手を使う場合が多いので、巧緻性といった時には手先の器用さのことだと考えてください。(足を使うサッカーや腕全体を使うバレーボールなどスポーツの場面では他の部位を指す場合もあります。)
特に幼児は手先から物の感触や形を学び、周囲の物を学習していきます。そのため子どもの巧緻性によって脳の発達具合や、発達スピードにまで影響を与えると考えられています。
巧緻性があると出来ること
大人が当たり前にやっていることの中には、手先が器用でないと出来ないことがたくさんあります。それでは子どもが巧緻性を身につけることでどんなことが出来るようになるのでしょうか?いくつか見ていきましょう。
小学校を受験するときの対策にもなる
私立小学校の受験では、子どもの巧緻性を見ることが増えています。なぜなら、「巧緻性が優れている子=賢い子ども」として学校側が重要視しているためです。子どもの巧緻性には「学習活動への積極性」と「計算能力との関係性」が認められています。
したがって、「手指が器用に動かせるか」という項目は子どもの潜在能力を図る1つの受験科目として採用されているのです。
ちなみに実際の受験では、エプロンで「後ろ手の紐結びができるか」、お箸で「小さなものを丁寧に運べるか」、文房具で「お弁当作りができるか」などが出題されます。
巧緻性の発達がもたらすメリット
巧緻性が発達するにつれて子どもは出来ることが増えます。しかし幼児の巧緻性が発達すると、別の分野の能力も一緒に成長していきます。具体的には下記の2つの能力が巧緻性の発達に影響を受けて発達していきます。
- 学習活動やモノづくりへの積極性が向上する
- 足し算の計算能力に密接に影響する
一つ一つ巧緻性との関係を見ていきましょう。
学習活動やモノづくりへの積極性が向上する
小学生の手指の巧緻性に関する研究(*)で、「手指の巧緻性が優れていると、子どもの学習意欲とモノづくりへの積極性が向上する」と説明しています。
手先が器用だと細かい絵や高度な工作を作りやすくなります。その結果、得意なことはもっとやりたくなり、どんどん創作意欲がわいていくことは想像がつきますね。
同じように、学習にも実は手先の器用さが関係しています。皆さんは小学校の頃の宿題は、どんなものがあったか覚えていますか?漢字ドリルや計算ドリルなど書かされる物が多かったと思います。
また授業中のノートやテキストへの書き込みも全て手を使います。ここで巧緻性が低い子どもは「書く」こと自体に苦手意識を覚え、勉強意欲が低下してしまうのです。
このように、巧緻性は単にできることが増えるだけでなく、二次的に得意と感じる活動が増え意欲の向上につながるという利点があるのです。
*小学生の手指の巧緻性に関する研究についての詳細は下記サイトよりご覧ください。
足し算の計算能力に密接に影響する
巧緻性は足し算などの「計算能力」にも好影響を及ぼすという研究もあります。
計算に手先の器用さをどう使うのか疑問をお持ちの皆さんも、指を折って計算をしたことはありませんか?掛け算や割り算ではさすがに指を使って数えることはないと思いますが、足し算や引き算などの計算なら指を使うことで計算しやすくなりますよね。
巧緻性が優れた子どもは、頭の中のイメージを指に正確に表現することができます。このことは逆もしかりで、巧緻性が優れた子どもは”今何本指を折っているか”を深く考えずに把握できるのです。その結果、指折りながら考える足し算のスピードが速くなり計算が得意になるという特徴があります。
幼児期に巧緻性を高めるために日常生活でできること
巧緻性を育てるのに特別な訓練はいりません。日常生活の中でもお子さんの巧緻性を伸ばしてあげられる工夫ができます!
年齢ごとに日常生活の中での巧緻性トレーニングの方法を見ていきましょう。
お子さまの年齢や段階に合わせ、ふさわしい方法で巧緻性を高めてあげましょう。
0~1歳頃から手を使う遊びをする
お子さまが0~1歳の場合、手を動かすだけでも十分なトレーニングになります。
そのため大きな紙を与えて、ペンなどで好きなように書かせるだけでも効果的です。上手く書けるかどうかを養うのではなく、あくまでも「持つ」「つかむ」「動かす」という感覚を持たせてあげましょう。
他にも「手遊び歌」がおすすめです。まだハイハイしかできない赤ちゃんでも一緒に遊べます。いろいろな手遊び歌がありますが、リズミカルに手と指を複雑に動かせる「グーチョキパーでなにつくろう」がおすすめ。
赤ちゃんに真似させるのはまだ難しいので、親指を握らせ、歌を歌いながら赤ちゃんの手や腕を優しく包んだり軽く揺らしたりしてあげましょう。子どもが1歳を過ぎれば、大人と一緒に歌を歌いながら手指を動かすという高度な手遊びにも挑戦できます。
3~4歳頃からは道具を丁寧に扱う練習が最適
3~4歳でおすすめの日常生活での訓練方法は「道具」です。例えば、お箸や鉛筆そしてはさみなども巧緻性が要求される細かい手指の動かし方です。
ほかにも、ボタンやマジックテープ、ファスナーで止めたり外したりできるか、瓶やペットボトル、缶などのボックスを開けられるか。さらには、スプーンやピンセットなどで小さなものを移せるかといった作業を繰り返し行うことが効果的です。
手を使う作業はいったん子どもの前で手本を見せて、「出来るかな?」といった声掛けで好奇心をあおってあげてください。子どもはゲーム感覚で取り組み、巧緻性を鍛えられるのでまさに1石2鳥の巧緻性トレーニングです。
幼児期の巧緻性を高めるトレーニングや遊び
幼児期からの巧緻性を高めるため、トレーニングや遊びで楽しく手指を器用にしてあげたいものです。ここでは、自宅での取り組みに効果的な9つの方法を紹介しましょう。
それぞれの方法について、ここから具体的に解説します。
折り紙
大人でも緻密さが求められる折り紙。巧緻性を高めるベーシックな方法です。紙を正確に折ったり、左右対称にさせたり、また紙を開いたり、細かな指先の動きが必要になります。
最初は大きな紙で単純な作業をさせ、だんだん年齢が上がるにつれ、紙を小さくし複雑な形に挑戦するとよいでしょう。
ちぎり絵
ちぎり絵は、和紙などをちぎって下絵に貼りつけます。紙をちぎる感覚のほか、下絵にふさわしい色選びを習得するのも目的です。
ちぎり絵の台紙はネット通販でも購入できますので、お子さまの年齢に合わせたものを選びましょう。また、フリー素材をダウンロードする方法もあります。
のりはり
円や半円、三角、四角など、さまざまな形の色紙を使った工作です。お子さまの集中力や目と手による識別能力が高まります。
◆方法
- のりで画用紙に好きな絵を書きます。
- 切った折り紙を画用紙の上に散らします。
- 画用紙を立てて余分な紙を落としたら完成。
はさみきり
はさみは、2歳になる頃から使えるようになります。まずは線にとらわれず紙を切ることから始め、だんだん1回切り→2回切り→連続切りと難易度を上げましょう。
出来るようにってきたら曲線切りやハート形などの対称図形、星形などの複雑な図形も切れるようにレベルアップさせていきましょう。指先を自在に調整できるようになるのはもちろん、安全で正しい刃物の取り扱いを知り、社会性も養われます。
つなぎあそび
遊びながら習得する衣服の着脱が「つなぎあそび」です。まずは、フェルトなどの生地を使ってボタン掛けを練習しましょう。
生地の色や形を工夫すると、お子さまの好奇心もアップしますよ。ボタン掛けが上手になったら、スナップやファスナーなどを使ってレベルアップさせてくださいね。
スタンプ
台紙にスタンプで絵を描きます。既製品の台紙やスタンプでもよいですが、親子でスタンプを手作りして巧緻性を高めるのもおすすめ。
既製品のスタンプなら指先の力を調整する運動が練習できますが、トイレットペーパーの芯などを使った手作りスタンプなら、図形の認識力もアップします。
ぬいさし
ぬいさしは、紙刺繍とも呼ばれています。硬い台紙に絵を描き、カラフルな糸で線に沿って縫うだけ。
糸通しや針の持ち方や使い方、玉結び、目打ち(穴開け)など習得しながら、集中力や持久力を養うのが目的です。ネット通販などで専用キットも購入できますが、手作りでも楽しめますので、ぜひ、試してみてください。
ビーズ
透明のてぐすにビーズを通していくことで、指先を器用にするだけでなく想像力や創造力、集中力を高めます。材料が100円ショップで入手できるのもポイントです。
買い物をする段階から、子どもの好奇心をくすぐれます。画像や動画を見せて完成品のイメージをさせると、より積極性が促せるでしょう。
指回し体操
内科医によって発案された指回し体操。「頭がよくなる指運動」として知られています。幼児期に習得するのは難しいかもしれませんが、ゆっくり親指だけでも回せるようになると感覚の基礎が身につくでしょう。
◆方法
- 10本の指を指先で合わせ、球体状にします。
- 親指から順番に指同士が当たらないようクルクルと回します。
- 回転方向を変えるのもポイント。
- 各指20回を目安に回転させましょう。
幼児期から巧緻性を高めるおもちゃ&教材
自宅で巧緻性を高めるトレーニングをする場合、おもちゃや教材を使うのも有効です。ここでは、巧緻性の育成や向上に役立つ3つのアイテムを紹介します。
ひもとおし
カラフルなチップをひもに通していくだけの簡単な知育玩具です。最初はパーツを通すことから習得させ、色をランダムに変えて通したり、すべての色を規則的に変えて通したりと、ルールのレベルを上げても認知能力が高まりますよ。
シールあそび
シールを使った知育もおすすめです。かわいいイラストに好奇心がくすぐられ、集中力も増します。モノの名前も覚えられますし、文字の勉強にもなりますので、小学校就学前の基礎的な学習にもぴったりです!
ペーパークラフト
はさみが上手に使えるようになったら、「切る」作業を生かしてペーパークラフトに挑戦しましょう。折り紙で習得した「折る」技術も役立ちます。創造力が高まりますし、自分で何かを完成させたという成功感覚や達成感も得られるでしょう。
まとめ:巧緻性は子どもの潜在能力!
小学校受験に必要なため急いでお子さんにトレーニングされることが多い「巧緻性」。しかし巧緻性は受験を乗り切るためだけでなく、学校の勉強やモノづくりへの意欲を育てる重要な能力です。
本記事を読んでお子さんの巧緻性を鍛え上げたいと思った皆さんのために、もう一度この記事で紹介している巧緻性トレーニングを復習しておきます。
また、幼児期から巧緻性を高めることで、「学習活動への積極性」「計算能力の向上」が期待できるうえに、「小学校の受験対策」にもなるとして注目されている資質です。
自宅で日常生活を送りながら取り入れられる方法も多く、身近な素材や専門的な教材を使い巧緻性をアップさせるトレーニングできます。ぜひ、本記事の内容をご活用いただき、お子さまの巧緻性を育成し、集中力や創造力などさまざまな能力を高めてあげてください!