近年日本では「子どもの自己肯定感が低い」事が問題視されています。
家庭が温かい場所であれば、子どもは伸び伸びと育ち優しい子に育ちます。このように家庭環境は子どもの成長に大きな影響を与えますが、自己肯定感も家庭環境によって影響を受けています。
- 子どもにどんな声掛けをしてあげたらいいか分からない
- チャレンジ精神を持った子どもに育てるにはどうしたらいいの?
- 自分の子どもが、自己肯定感高く育ってくれているか知りたい
このような疑問を持っている方のために、本記事では子どもの自己肯定感について下記の流れで解説していきます。
自己肯定感は子どもが自分自身で成長していくために必要な感覚です。
お子さんの幸せな将来を願っている方は、この記事を読み子どもの接し方を少しずつ工夫していきましょう。
子どもにとって重要な「自己肯定感」とは?
自己肯定感とは子どもが自分を肯定的に捉える感覚の事を指しています。一般的な言葉で言い換えると「自信」に近い言葉と言えるでしょう。
しかし自己肯定感は自信よりも広い意味で使われます。具体的には、自信が「○○ができる」という出来る事に対して自分を評価する感覚だとすれば、自己肯定感は自信に加え「○○ができない」という評価を自分に下しても安心して周囲に受け入れてもらえる感覚も指すのです。つまり、ダメな自分も含めて自分に価値があると思えている状態を指します。
自己肯定感が高い人は、出来ない事も1つの自分として受け入れられるので、「結果を必要以上に意識しすぎない。」「人の悪い所も受け入れられる。」といった人間力とも言い換えられるポジティブさを持っています。
何ができるかという能力と同じくらい人間力が評価される場面が多い現代社会では、人間力に直接関係してくる「自分を認められる感覚」は育んでおくべき1つの才能ともいえるのです。
なぜ子どもにとって自己肯定感が重要なの?
自己肯定感が高いと挑戦心が芽生えたり、人の関係構築が上手くなるため、早めに高められた方が小中学生のうちに多くの事を学べます。
自己肯定感の高い子どもは、早いうちから自主的に挑戦し、知識や度胸を付けていきます。また、人間関係も良好に築き上げられるため、その後の人生の大きな財産となる友情を少年期から上手に作れるのです。
大人になってから自己肯定感を高めても遅くはありません。しかし、早い方が自己肯定感が低い状態で少年期を過ごした子どもよりも密度の濃い少年期を過ごせる言えるでしょう。
また自己肯定感は他人と比べて負けるとどうしても下がってしまいます。他人と競争する場面が少なく、自分への評価も定まっていない幼少期の方がより簡単に自己肯定感を高める事が出来るのです。
自己肯定感が低くなるとどうなる?
自己肯定感が高いと人生においてメリットがありますが、逆に低いと人間関係や社会生活に支障が出てきます。
どのような支障が出てくるか見ていきましょう。
いじめっ子になってしまう可能性がある
自己肯定感が低い子どもの中には、いじめっ子になってしまう場合があります。
自己肯定感が低い子どもは人と比べる傾向にあるため、人より秀でなければ自分には価値がないと考えてしまいます。そのため人よりも秀でている部分を自分で見つけられない子どもは、人の足を引っ張たり、無理矢理自分が上に立とうとするのです。
無理矢理自分が上に立つ簡単な方法として「いじめ」があります。いじめは暴力や無視によって相手を痛めつける事で、優越感を感じる事ができます。
このようにして、自己肯定感が低い子どもは、自分よりも弱いと判断した子どもをいじめ、いじめないと自分のプライドが保てないという負の連鎖に入っていくのです。
挑戦をしたがらない
自己肯定感が低い子どもは、挑戦する意欲が低いという特徴があります。
自己肯定感が低い子どもは失敗する自分には価値がないと考えてしまうため、結果に必要以上にこだわりすぎてしまいます。成功する喜びよりも、失敗する恐怖の方が勝ってしまうため、新しい事や難しい事になかなか挑戦できません。
挑戦しないという事は、子どもにとっては新しい能力や価値観を獲得するチャンスを逸している事になります。すると自己肯定感が低い子どもはさらに焦りを感じ自己肯定感を下げるという負のスパイラルに陥ってしまうのです。
自己肯定感の低さは非行の原因にもなる
自己肯定感はいじめや挑戦心以外にも下記のようなデメリットが生じる恐れがあります。
- コミュニケーションが不得意になる
- 低学力
- 少年犯罪
- 薬物依存
- 10代での妊娠
- 自殺
これを見て「非行」と呼ばれる問題行動が、自己肯定感の低さによって起こっている事が分かります。
親に恵まれなかった子どもが、非行に走ってしまう事はよくある話です。しかし保護者としては子どもに充分に愛情を注いでいるつもりでも、自己肯定感を上げる接し方ができず、逆に下げてしまうような声かけをしてしまっていたら結果は同じになってしまう可能性があります。
さらに悪い事に自己肯定感が低いと、さらに自己肯定感を下げる事になりかねない問題行動を自ら選択して取るようになります。
幸せの根源にも不幸せの原因にもなる自己肯定感の大切さがお分かりいただけたのではないでしょうか。
子どもの自己肯定感を高めるために保護者ができる工夫
ほめ写プロジェクトの調査によると子どもの自己肯定感は小学生を境に大きく下がります。つまり小学校入学前後の保護者の皆さんの言動が子どもの将来の自己肯定感の高さに大きな影響を与える可能性が高いという事です。
もしあなたが、今なにも意識せずに子どもに声かけをしていると感じているなら、これからは下記の5つの注意点を意識しながら子どもに接するようにしてください。
幼稚園のうちに充分な自己肯定感の下地を作れるように、1つ1つ細かく見ていきましょう。
①子どもの話をしっかり聞いてあげる
子どもは保護者に話を聞いてもらう事で、愛情を感じます。
そのため、子どもがしつこく話かけてくるからといって、適当にあしらったりすると「自分は受け入れてくれていない」と感じてしまうのです。
幼稚園児の子どもは特に親の感情に敏感になります。しつこいからといって適当に接するのではなく、しっかりと聞いた上で親の今は休みたいという気持ちを愛情をこめて伝えましょう。
また子どもの話を聞くときの注意点としては、「子どもの意見を否定しない」「興味を持って質問をしてあげる」という点を意識しましょう。
②子どもの挑戦を褒めてあげる
大人はついつい物事の結果を評価してしまいがちですが、子どもは挑戦する事が仕事なので、挑戦した分褒めてあげてください。
もちろん成功した時に褒めるのはいい事です。しかし失敗した時に、保護者が無反応だったり、「余計な事をして!」と叱ってしまうのは自己肯定感を下げる原因になるのでよくありません。子どもは失敗するのに恐怖したり、成功しなければ価値がないのだと勘違いしてしまうからです。
例えば、積み木を派手に崩した時でも、高く積み上げるのに挑戦した事をひとまず褒めてあげましょう。自己肯定感が高まれば自然と自分の得意を分野を見つけ、優秀な大人に育っていくはずです。
子どもを信じて結果よりも挑戦そのものに関心を持ってあげましょう。
③悪い事をしたときに頭ごなしに否定しない
子どもが悪い事をしたときにも、頭ごなしにダメなものはダメというのは避けましょう。
幼児期の子どもは人の立場に立って考える能力がまだ発達していないため、大人の善悪を押し付けても理解できません。そのため人に迷惑をかけたらダメという発想も、丁寧に自分だったらをイメージさせて説明する事で、やっと理解できるかどうかという程度です。
そのため頭ごなしに否定すると、自分のやったことが悪いのだと勘違いしてしまい自分自身を否定する原因になってしまいます。
子どもには子ども独自の正当性があるため、一旦受け入れてから、少し修正を加えてあげるという意識が子どもの自己肯定感を育てる秘訣です。
④子どもの決断を尊重する
幼児期の子どもはまだ自分の事を自分で決定する場面は少ないかもしれませんが、子どもの決断を尊重するのも自己肯定感を下げないために重要です。
例えば年少の子どもが鉄棒にチャレンジしたいといっても、危ないからといって妨げないようにしましょう。
小学生に上がるにつれて、やりたい習い事など自分の意見をどんどん持ち始め、自分で決断する場面が増えていきます。子どもが成長した時にあなたの都合だけで子どもの事を決めないためにも、子どもの主張は一度耳を傾ける癖をつけておきましょう。
⑤無条件に褒めてあげる
保護者だけがしてあげられる最も愛のある声掛けは「無条件の褒め」です。
何かを始めた時や成し遂げた時、チャレンジした時に褒めてあげる必要はあります。しかしそれ以上に重要なのは、あなたにとってお子さんが大事であり、存在するだけで価値がある事を伝えるための「無条件の褒め」といえるでしょう。
自己肯定感の高さの秘訣は、自分の存在価値そのものに対する肯定感です。お子さんの存在そのものに、日ごろから「生まれてきてくれてありがとう」や「あなたは私の宝物だよ。」などと声をかけてあげてください。
どんな褒めよりもこれらの無条件の褒め言葉がお子さんにとっては最も嬉しい声掛けになるはずです。
自己肯定感が低下していないか見分ける方法
皆さんは「自分の子どもが知らないうちに自己肯定感が低くなっていたらどうしよう」と思っていませんか?
お子さんの自己肯定感が高いか低いかは、普段の子どもの反応や態度から感じ取れます。常にお子さんの反応を気にかけるようにしてあげてください。
①褒めても喜ばない
褒めても素直に喜べない子どもは、自己肯定感が低くなっている可能性があります。
自己肯定感が低いと自分に過度な期待をかける事を嫌がるので、褒められても素直に受け入れる事が出来ません。
例えばテストで100点を取ったことを褒めても、「運がよかった」や「簡単だった」と自分の評価を下げようとしてきます。
こういった場合には結果ではなく、チャレンジを褒めるように意識を切り替えましょう。
②怒ると全て自分のせいにして落ち込む
怒られた時に反省する事はいい事ですが、自分を責めて必要以上に落ち込んでいる場合にも自己肯定感が低くなっているといえるでしょう。
一時的に怒る事は子どものしつけ上必要なプロセスです。しかし、その後のフォローを怠っていませんか?
きちんと反省した後は、愛情を伝え、今後どう改善できるか話しましょう。
③挑戦したがらない
自己肯定感が低い子どもに共通して言える特徴は、挑戦を嫌がるという事です。
自己肯定感が低い子どもは「挑戦の結果=自分の価値」と捉えてしまう傾向があるため、挑戦して失敗すると自分には価値が無いように感じてしまいます。そのため自分の価値が下がる事を恐れて挑戦を嫌がります。
小学生になると習い事を始めたり友達や家族と対戦ゲームをする機会が増えます。こういった場面での子どもを注意深く観察し、もし乗り気でなかった場合には注意が必要です。
子どもの挑戦心そのものを褒めてあげるように、保護者の皆さんの意識を変えていく事が重要です。
まとめ:子どもの全てを受け入れる事が自己肯定感を上げるためのコツ
本記事では子どもの自己肯定感の大切さとその育て方について解説してきました。
自己肯定感は子どもの人間力から能力まで幅広く影響を与えます。高ければ人生をより豊かに幸せに生きられますし、低ければ非行に走ってしまう可能性もあります。
お子さんを幸せにも不幸せにも導く、自己肯定感を上げるコツは「子どもの全てを受け入れる事」です。具体的に有効な方法として今回紹介した5つの方法をもう一度おさらいしましょう。
子どもに期待してしまうのは親心として仕方がない事です。しかし子どもの幸せを願うのであれば、子どもの「できない」や「いたらない」部分も全て受け入れてあげください。
保護者である皆さんが無償の愛を注いでいれば、お子さんは自己肯定感を高め、自分から人生を好転させる術を身に着けていきます。
お子さんの成長力を信じて、お子さんの全てを受け入れられるように努力しましょう。