サドベリースクールってどんなところ?サドベリー教育の特徴からメリット・デメリットまでご紹介!

+1

自由を尊重した教育と言われるサドベリー教育をご存知でしょうか?サドベリー教育は「授業なし、宿題なし、テストなし、学年なし、先生なし」という従来の学校概念とは異なるユニークな教育方法です。

日本ではまだ馴染みがないことから、いざわが子を入学させようと考えた時に下記のような疑問や不安を持つ方も多いのではないでしょうか。

  • サドベリー教育にデメリットはないの?
  • 自由なのはいいけどきちんと勉強はしているの?
  • 日本にあるサドベリースクールはちゃんとした学校?

この記事では、サドベリースクールについてみなさんが理解できるよう下記の流れで解説していきます。

子どもの教育環境は今後の人生に大きく関わってきます。お子さんにサドベリー教育が合っているのか判断できるように、この記事をしっかり読んで理解を深めましょう。

 

自由な教育と言われるサドベリースクールとは

サドベリースクールは、子どもが興味のあることを追求しながら、多様な人と関わり尊重し合って成長していく新しい教育方針の学校です。大人も子どもも対等という考えのもと、学校の運用についても子どもが一緒に話し合って決めていくことから、デモクラティックスクール(民主主義学校)とも呼ばれています。

サドベリースクールの誕生と理念

サドベリー教育は1968年に、ニューヨークのコロンビア大学で物理学や科学史を教えていたダニエル・グリーンバーグ氏が、理想の教育を実現するために地元住民の協力のもと「サドベリー・バレー・スクール」を開いたのが始まりです。

グリーンバーグ氏がサドベリー・バレー・スクール創設時より掲げていた理想が、下記の2つの理念でした。

  • 子供の成長のため、個人の自由を尊重すること
  • 関係者全員が平等に運営に関わること

このサドベリー・バレー・スクールの教育理念をモデルとして設立された学校がサドベリースクールです。

グリーンバーク氏は、決められたカリキュラムを強制的に受けさせる現在の教育は、多くの子どもの学ぶ意欲を削いでいるという意見を持っていました。大人達が学習内容や勉強方法を決めつけず、子ども達の可能性を信じた自由な教育を行った方が子ども達の才能を伸ばしてあげられると考えたのです。

サドベリースクール開校初期は、何も教えない事に対して学校運営者の怠慢だという批判を浴びていました。
しかしサドベリースクールの卒業生の多くが一流大学に進学したり、若くして起業し活躍していることなどが話題となり、現在では第三の学校形態として広く受け入れられています。

なぜ今サドベリースクールが注目されているのか

サドベリースクールが注目浴びている理由として、現在の教育が作られた時代背景が関係しています。

現在の義務教育は昭和の時代に必要だった、大量の知識や言われた事を忠実にこなす能力を育てるために生まれました。一方で現代では、知識は簡単にインターネットで調べられ、自己判断が必要ない単純作業はロボットに取って代わられつつあります。

この時代の流れの中で義務教育の代わりに主流になっていく事が期待されているのが、オルタナティブ教育(*)です。サドベリースクールはそんなオルタナティブ教育の流れに乗っている教育方法なのです。

*オルタナティブ教育とは
学校教育法で規定されていない教育法のことであり、代表的なものにシュタイナー教育やモンテッソーリ教育等があります。探求型、少人数制、無学年制といった方式をとることが多いのが特徴で、思考力や行動力が身に付きやすいと言われています。学費が比較的高かったり、オルタナティブ教育実施校では学校教育法上の卒業資格を得られない場合があるので考慮が必要です。

実際サドベリースクールは、子ども達が独自に持つ好奇心から自主的に学習していく事を期待していく教育です。人工知能などのテクノロジーに置き換えられる事のない、独自の視点を持った人を育てるには最適な教育方法といえるでしょう。

サドベリースクールが向いているご家庭

サドベリースクールが向いている家庭は、すでにお子さんに熱中していることがある家庭です。1つのことに没頭し、声をかけてもやめようとしないタイプのお子さんは、自分の興味をとことん追求できるサドベリースクールが向いていると言われています。

例えば昆虫観察が好きなお子さんであれば、一日中昆虫の事を調べていても学校からは何もいわれません。むしろスタッフが昆虫の本を紹介してくれる場合もあるのです。

このような1つのことに没頭できるお子さんの場合、興味と関係なく勉強を強制することで、勉強嫌いになってしまいます。何か一つに集中できる素養さえあればサドベリースクールの方が勉強好きになる可能性が高くなるのです。

一方で現代社会で重視されている偏差値を上げるための勉強はサドベリースクールでは行われません。そのためお子さんに「いい大学に入れさせてあげたい。」と考えているご家庭には向かないと言えるでしょう。

教育の概念をくつがえすサドベリースクールの特徴

サドベリースクールには従来の学校とは大きく異なる3つの特徴があります。それぞれの特徴について詳しく解説していきましょう。

自由な学校生活

サドベリースクールでは、カリキュラム・授業・宿題・テストのすべてがありません。毎日必ずあるのは、登校・ミーティング(自由参加)・掃除・下校のみです。

子どもが興味のあることを自分のペースで自由に学ぶことが教育方針なので、大人からの強制や口出しも一切ありません。子どもの個性を尊重して、焦らずゆっくりじっくり子どもの成長を見守っていきます。

学年という概念はない

サドベリースクールでは、子ども達を年齢によってクラス分けしません。学年がないため4歳から19歳くらいまでの子どもが同じ空間の中で教育を受けていきます

学年分けをしない事によって子ども達は思いやりを身に着けられます。幅広い年齢の子ども達が一緒に過ごすことで、小さな子は年上の子をお手本にしたり、年上の子は小さな子の面倒をみたりと、お互いに刺激と影響を与え合って成長していくのです。

スクールミーティング

サドベリー・スクールの大人は教員としてではなく「スタッフ・メンバー」として生徒と同じスクールメンバーとして子ども達と接します。スタッフの役割として学習支援やディスカッションなどをして学校運営に必要な活動を子ども達と一緒に行っていきます。

このシステムの中で最も特徴的なのは、校則を子ども達が主体となり、メンバー全員で決める点です。

全員が平等に一票ずつ投票権を持っていて、学校のルールづくり・予算管理・学校スタッフの採用・解雇にいたるまで、スクールミーティング(全校集会)を行って決定していきます。また学校でルール違反やトラブルが起きた場合は、子ども達によって構成された司法委員会で問題について話し合い解決策を考えます。

サドベリースクールの教育スタイル

授業もない、先生もいない。じゃあ、子ども達はどのように学んでいくの?と疑問に思った方も多いのではないでしょうか。ここでは、参考までにサドベリースクールの教育スタイルを紹介します。

好きなことを学ぶためにプロジェクトを立ち上げる

何か深く学びたいことができた子どもは、プロジェクトを立ち上げ自ら学ぶ環境をつくります。プロジェクトが成立するまでの流れは以下で説明しましょう。

プロジェクトを進めるためには、学校スタッフや他の生徒の承認が必要です。そのため子どもは、いかにして承認を得るか試行錯誤の上プレゼンテーションを行います。

このようにサドベリースクールでは、ただ子どもに自分の興味のあることだけを追求させるわけではありません。こうした過程の中からも交渉力やコミュニケーション力を養ってもらうことも教育の一貫と考えています。

自分達で作る学校ルール

自由を尊重するサドベリースクールですが、実はたくさんの学校ルールが存在します。

年齢もバラバラ、考え方も違う他人同士が集まっているからこそ、みんなが居心地よく過ごせるように学校ルールが必要となるのです。そのため、子ども達は自分の思いや自由が奪われないようスクールミーティングでよく話し合い、みんなでルールを決めます。

自分達で校則を決める事の一番のメリットは、自分達が納得して決めたルールなので、子ども達はしっかり守るようになる点です。校則を自分達で作る事によって、協調性とルールを守る重要性を学べます。

サドベリー教育のメリット

子どもが興味を持ったことを自由に学べるサドベリー教育ですが、具体的なメリットを詳しくみていきましょう。

① コミュニケーションスキルが身につく

学びたいことを自ら提案する機会や様々な立場の人と積極的に話し合う機会が多いため、自分の意見を言葉にするコミュニケーションスキルが育まれます。また学年という概念がないため、同クラス内で年上・年下との関わり方も学べます。

② 好奇心が伸ばせる

学びを強制されないことは、子どもにとって好奇心を伸ばす絶好の機会です。興味があることや好きなテーマに自由に打ち込めるため、「好き」を原動力にどこまでも追求する能力が育まれます。

③ 自主・自立の精神が育つ

幼少期から学校運営に関して投票権を与えられるため、自分の意見を考える意識が芽生えます。積極的に発言しなければ、自分にとって都合の悪いルールが出来かねません。他人の考えが自分にどう係わるのかを考えることで、自主的な姿勢が育まれていきます。

④ 行動力が養われる

自分で考えて動くことが習慣的に求められる環境のため、自然に行動力が身につきます。サドベリースクールの中では行動を起こさなければただ時間が過ぎていくだけです。一方でやりたいと思ったことは大抵のことは実現できる環境でもあります。そのため子ども達は自分のやりたいことはとりあえずやってみるという習慣が身につきます。

⑤ 異世代交流による相互作用が起こる

年少の子にとっては同じクラス内に年上のロールモデル(お手本となる人物)がいることで、モチベーション向上につながります。逆に、年上の子も年下の子に教えることでより理解を深められるので、お互い刺激と影響を与えあって成長することができます。

サドベリー教育のデメリット

メリットが多いサドベリー教育ですが、実はデメリットもあります。詳しくみていきましょう。

協調性が欠けやすい

自分の意思を尊重される環境で育つため、他人が決めたことに従うことが苦手になる子どももいます。社会にでたときに協調性が欠けているとうまく環境に馴染めない可能性があります。

②年功序列を意識できなくなる

サドベリースクールでは、年齢に関係なく誰でも対等という教育方針のため、年功序列の概念がなくなります。そのため年上の先輩を敬う心やマナーに対する意識が弱くなりがちです。

③場所が限られる

サドベリースクールは現在日本に17施設ほどしかありません。自宅から通える範囲にサドベリースクールがあれば問題ないのですが、近くにない場合は通学が難しくなってしまいます。

④費用がかかる(※子どもが小学生以上の場合)

義務教育ではないため、小学生から中学生でも学費が必要となります。子どもが小中学生の年齢である場合、公立学校に在籍しながらサドベリースクールに通うことになります。そのため私立の小中学校に通わせるよりも学費がかかってしまいます。

⑤卒業資格が得られない

サドベリースクールは、法律上の「学校」には当たらないため、卒業資格が取得できません。そのため小・中学生は公立学校に在籍しながら卒業資格を取得することになります。その後進学したい場合は、「高等学校卒業程度認定試験」に合格すれば大学・短大・専門学校の受験資格が得られます。

日本にあるサドベリースクールのご紹介

ここでは日本にある全国各地のサドベリースクールをご紹介します。ほとんどのスクールで見学会や体験会が設けられているので、興味のある方はぜひチェックしてください。

札幌サドベリースクール 【北海道札幌市】
デモクラティックスクール さいたまみゅーず 【埼玉県さいたま市】
一般財団法人 東京サドベリースクール 【東京都世田谷区】
TAMAサドベリースクール さくらんぼ学園 【東京都八王子市】
一般社団法人湘南サドベリースクール 【神奈川県茅ヶ崎市】
デモクラティックスクール びーだ 【静岡県浜松市】
一般社団法人八ヶ岳サドベリースクール 【山梨県北杜市】
デモクラティックスクール まんじぇ 【愛知県一宮市】
一般社団法人 三河サドベリースクール・シードーム 【愛知県岡崎市】
一般社団法人西宮サドベリースクール 【兵庫県西宮市】
一般社団法人デモクラティックスクールまっくろくろすけ 【兵庫県神崎郡】
新田サドベリースクール 【鳥取県智頭町】
野あそび学校 のがり 【佐賀県神埼市】
宮崎デモクラティックスクール にじのりずむ 【宮崎市佐土原町】
沖縄サドベリースクール 【沖縄県宜野湾市】
デモクラティックスクールみぃち 【沖縄県与那原町】

サドベリースクール教育に関連する書籍のご紹介

より具体的なイメージを掴みたい方は、サドベリースクールに関する本を読んでみるのもおすすめです。今回はサドベリースクールをより理解するためにおすすめの本を二冊ご紹介します。

 世界一素敵な学校 サドベリー・バレー物語 改訂新版

サドベリースクールの創始者であるダニエル・グリーンバーグ氏の著書。サドベリースクールの理念が詳しく書かれているサドベリースクールの入門本です。

 才能あふれる子の育て方

世界の子育て方法や教育方法がこの1冊でまるわかり!サドベリー教育からその他の教育法まで子育てのヒントがつまっています。

 

自主性を尊重し自由に学べるサドベリースクール

ここまでサドベリースクールについて最低限知っておきたい情報をご紹介してきました。子どもの自主性を尊重しながら大人と一緒に学校を運営していくというユニークな特徴を持つサドベリースクールについて理解が深まったのではないでしょうか。

最後にサドベリースクールに通うことで子ども達が得られるメリットを振り返っておきましょう。

日本ではまだ馴染みの薄いサドベリー教育ですが、決まったカリキュラムはなく生徒が自分の興味関心にあわせて学べるので、好奇心から学習意欲を伸ばすのに効果的とされています。従来の教育が合わなかったり、子どもの個性を伸ばしていきたいと考えている方は、ぜひ一度サドベリースクールの見学会や体験会に参加してじっくり検討してみてください。

+1
21世紀の子育てを考えるメディア「How Kids」