楽しく運動して脳機能を高める!子どもの最強の遊びは「鬼ごっこ」!体育指導の専門家が解説

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「運動をすると脳が活性化する」と耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。確かにスポーツ万能で勉強も出来るという子がいます。では一体、どうしたらわが子もそのように育つのか気になりますよね?
そこで今回実際に運動と脳の関係があるのかどうか、体育指導の専門家であるスポーツひろば代表の西薗 一也氏に徹底インタビューしてきました。
取材協力者プロフィール
スポーツひろば代表
西薗 一也 / Kazuya Nishizono
■公式HP:http://www.sports-hiroba.com/
東京都出身。一般社団法人子ども運動指導技能協会理事。株式会社ボディアシスト取締役。スポーツひろば代表。日本体育大学卒業後、一般企業を経て家庭教師型体育指導のスポーツひろばを設立。運動が苦手な子どもを対象にした体育の家庭教師の事業をはじめとして、子ども専用の運動教室の開設や発達障害児向けの運動プログラムの開発など、新たな体育指導法の普及に幅広く取り組む。著書に『発達障害の子どものための体育の苦手を解決する本』(草思社)や『うんどうの絵本』『かけっこの絵本』『すいえいの絵本』『ボールなげの絵本』(あかね書房)がある。

ワーキングメモリを伸ばす方法は、褒めてやる気を促すこと!

――運動をすることが学習効果向上につながることもありますか?

脳を鍛えるには運動しかない」という”運動と脳の活性化について解説している本”も出ているのですが、運動することによって脳が鍛えられるという理論があるんです。

脳が活発に働くことで、思考力や記憶力などが強化され、学習効果の向上に繋がるわけです。それ以外にも運動をすることでストレス発散やうつの改善、またADHD(注意欠陥・多動性障害)などの発達障害にも効果的と言われています。

当教室でも発達障害児の指導で「脳機能の改善」を重要視しています。発達障害児は特にワーキングメモリ(作業・作動記憶)が低いと言われているんです。

――ワーキングメモリ(作業・作動記憶)が低いとどうなるのでしょうか?

ワーキングメモリの低い子にケンケン遊びをするときの指示の仕方を例にあげて説明しましょう。

  1. 「真っすぐ行って、あのコーンのところまで行ったら戻ってきてね。」と指示。
    ➡指示が長くて覚えられないため、全く違うことをやってしまう。
  2. ケンケンを行います。コーンに行きます。戻ります。」と指示。
    ➡言葉と言葉を区切って3ワードくらいにして指示を出すと、理解しやすくなり指示された行動をとることができる。

このようにワーキングメモリを伸ばさないと、①のような長文の指示は理解できないのです。いかに言葉を削って指示を出すかがとても大事になってきます。

言葉を削って3ワードで理解できることが分かったら、3つまで記憶領域があると捉えます。まずは3ワードに慣らしていき、3ワードで出来たことを褒めてあげる。

一般的な学校ではワード単位で指示をすることはありません。だから先生の長い指示が理解できずに先生に怒られてしまうのです。ワーキングメモリの低い子は怒られたことで、「指示を聞く」ということ自体に記憶領域が取られなくなってしまいます。ワーキングメモリを伸ばすためには、成功体験が必要不可欠なのです。

――どのうような成功体験を積ませてあげているのですか?

まずは、3ワードで出来たことを褒めて自信をつけさせてあげます。慣れたところで4ワードに増やしてみる。それも出来たら「すごい、よく分かったね!」とまたしっかり褒めてあげるんです。褒められると、指示に対して「もっとたくさん覚えよう。」という気持ちが湧き出す。そうすると脳機能が改善されてくるのです。

――ワーキングメモリを伸ばすことで他にもできるようになることはありますか?

一つのことをしながらもう一つのことも行う「同時処理能力」が伸びる。

例えば人の話を聞いているときに、視野に違うのもが入ってきたとしましょう。

  • ワーキングメモリが低い ➡【過集中になる】
    あとから視野に入ったものに集中がいってしまい、聞いていたはずの話は全く聞こえなくなってしまう。
  • ワーキングメモリが高い ➡【過集中になりにくい】
    あとから視野に入ったものに気づくが、先生の話もきちんと聞いている。

このようにワーキングメモリが伸びるとデュアルタスク(二重課題)能力が養われてどちらもしっかり脳の中で処理できるようになるのです。そういう点でも勉強・学力にも役立ってくると考えられます。

この先の予測ができるようになる。

例えば、先生が「やってはいけないよ」と言っている行動があるとします。

  • ワーキングメモリが低い ➡ 今やらなきゃ気が済まない
    先を見据えて行動することができない。
  • ワーキングメモリが高い ➡ 今これをやると怒られるから、やめておこう
    先を見据えて行動することができる。

ワーキングメモリが低いと短絡的な考え方になってしまうんです。深く考えず感情のままに行動する。「先生に怒られる」という先の予測が立てられないのですよね。

そこでワーキングメモリを伸ばすことで、今何をどうしたらダメなのか?先生に怒られるのか?予測力がつくようになるのです。予測力は日常で様々な経験値を積むことで伸ばすことができます。

予測力があれば、これから身に起こる危険を察知して回避することもできるので、ぜひつけておきたいですね。

鬼ごっこは体力と脳機能を鍛える子どもの最強の遊び!

――遊びの中でもワーキングメモリを伸ばすことは出来ますか?

運動しながら楽しくワーキングメモリを伸ばすには、「鬼ごっこ」がおすすめです。鬼以外は全力で逃げて、鬼は全力で追いかけますよね。

このとき逃げる側は、全速力で走りながら「どうやったら鬼をまけるか」といつも以上に脳をフル稼働させて考えるんです。しかも楽しみながら(笑)そうすると「デュアルタスク能力」も上がり、次どうするかという予測を立てるようにもなります。

鬼ごっこは単純な遊びに見えて実は、全体を見る俯瞰的な能力があがり体力もつくことから、最強の子どもの遊びと言われているんですよ。

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