スポーツひろば代表
西薗 一也 / Kazuya Nishizono
■公式HP:http://www.sports-hiroba.com/
東京都出身。一般社団法人子ども運動指導技能協会理事。株式会社ボディアシスト取締役。スポーツひろば代表。日本体育大学卒業後、一般企業を経て家庭教師型体育指導のスポーツひろばを設立。運動が苦手な子どもを対象にした体育の家庭教師の事業をはじめとして、子ども専用の運動教室の開設や発達障害児向けの運動プログラムの開発など、新たな体育指導法の普及に幅広く取り組む。著書に『発達障害の子どものための体育の苦手を解決する本』(草思社)や『うんどうの絵本』『かけっこの絵本』『すいえいの絵本』『ボールなげの絵本』(あかね書房)がある。
親の一言は重大!褒めて子どもの成長意欲を伸ばそう
――6歳未満のお子さんが運動神経を伸ばすために、親としてできることは何でしょうか。
褒めることです。ポジティブな声をかけてあげることです。
子どもって、基本的には何をするにも最初は上手く動けないんですよね。だけど、できないことに対して「頑張りが足りないからだ!」なんて言ってしまうと、子どものやる気ドーーーンと落ちてしまいます。もしかしたらすごい才能を持っているかもしれないのに、その一言で全てを失ってしまう。
何事も成功体験をしないと自信はつかないんです。競いごとに負けてばかりいる子に対して、「何でお前は負けるんだ」とか、「何で1位が取れないの?」、「何でいつもビリなの」というように厳しいことを言ってしまうと、その時点で「できない」というレッテルを貼ることになります。
子どもは、お父さんお母さんの言葉を深く受け止めるものです。幼児期は特に、お父さんお母さんが一番の指導者とも言えますから、親の言葉一つで全てが変わってしまうということを理解していただきたいですね。
また、子どもは自分ができない運動を求められた時に、照れ隠し、できない隠しのようにまず「ふざける」のです。それをお父さん、お母さんが見て怒ってしまうと、余計にやりたくなくなる。子どもがふざけているときは、「できない」「やり方が分からない」「何をすればいいのか分からない」という脳内エラーが起こっている状態なのです。
そこを理解した上で、やり方をきちんと教えてあげることが大事なポイントなんです。教えたとおりにやれたのなら出来ても出来なくても、「いいんだよ、それで大丈夫」と焦らせない。ここで子どもの得意不得意、好き嫌いの差が出てくるのです。
親として最初にできることは子どもの”今”を認めること
――わが子が他の子より遅れてると感じたとき、親として何をしたらいいでしょうか?
あの子はとてもできているのに、うちの子はできていない・・・。そうやって他人の子と比較してしまう親御さんがいますね。
お受験話に例えると、受験の当日までにできるようになっていればいいわけですが、1年ぐらい前からある程度できてしまっている子もいたりします。そのできている子と比較して、「うちの子は何でこんなに遅いんだ」と嘆いたり悩んだりしてしまう。だけど、発達レベルは人それぞれだから、発達の早い子だけを見て比較するのではなく、その子に合ったレベルで教えていくことが重要なのです。
今のわが子の実力を認めてあげて、出来ないところはアドバイスしてあげたり、少しでも出来たらしっかり褒める。褒めてあげることで「挑戦したら褒められる、いいことがある」という脳の構造にさせておく。褒められて嬉しかった気持ちは、次はもっと頑張ろう!という子どもの意欲に繋がります。
ここで1つ注意しておきたいのは、褒める代わりにおもちゃを買ってあげるというような「ご褒美型」にはしないこと。何かご褒美がないとやらない子に育ってしまいます。なので、そこは精神的な癒しにとどめるようにしましょう。
子どもは褒められることで成功体験を感じやすくなります。
例えばAくんが友達と鬼ごっこをしたとします。常に全力で逃げていたら、「Aくん、足速いよね!Aくんが鬼になったら絶対に捕まっちゃうよ。」と友達から言われた。『ただ思いっきり走っていたら、誰も追いつけなかった。僕は足が速いんだ!これからも褒めてもらえるように、もっと速く走れるようになろう!』と、より一層努力をするようになり、もっと足が速くなる。人間の脳は一度成功体験を味わうと、繰り返し味わいたくなるようにできているんですね。
反対に、「Aくん、いつも遅いよね!Aくんがいるとチームは負けるね。」という負の言葉を投げかけられていると、『僕は駄目なんだ…』というネガティブな気持ちになって運動が嫌いになってしまいます。だから子どもが思い通りにできなくても決してネガティブな言葉をかけず、よく頑張ったね!今日はここまで出来たね!と、ポジティブな声をかけて褒めてあげましょう。すると前向きな気持ちになれます。
親御さん自身が根気よく我が子と向き合うこと。決して他の子と比較しない。そして子どもが「また次回も頑張ろう!」って思える脳を育ててあげることが子どもの運動神経向上のカギとなります。