2020年から幼児教育の無償化が始まり、就学前教育への注目がさらに高まっています。
今回紹介する「ペリー就学前プロジェクト」は、就学前教育の重要性を立証した研究です。
- そもそもペリー就学前プロジェクトってなに?
- なぜペリー就学前プロジェクトが注目されているの?
- ペリー就学前プロジェクトの結果は自宅教育にも活かせる?
このような疑問をお持ちの方に、ペリー就学前プロジェクトを解説しますので、ぜひご覧ください。
本記事では以下の流れで開設します。
就学前教育の重要性を再認識するだけでなく、ご家庭での子育て方法にも役に立つこと間違いなしです!
ペリー就学前プロジェクトとは
ペリー就学前プロジェクトとは、就学前教育の有無が子どもの収入や職業などの将来にどう関わるかを解き明かした研究です。
1962年時点の幼児を対象にした研究ですが、その幼児たちが大人になっている今でも彼・彼女らの現状を追跡している、超大作の研究になります。
それでは、ペリー就学前プロジェクトの内容や研究結果を詳しく見ていきましょう。
ペリー就学前プロジェクトはアメリカの教育実験
ペリー就学前プロジェクトを簡単に説明すると、「就学前教育を受けた子どもと、受けなかった子どもの将来の違い」に着目した研究です。
研究対象になったのは3~4歳の123名。これらの幼児を「就学前教育を受けるグループ」と「受けないグループ」の2つに分け、追跡調査しました。
実験では就学前教育を受けるグループにだけ毎日2時間半「アクティブラーニング」など能動的な教育を30週間受けさせています。
研究の詳細は下記のとおりです。
追跡調査:3〜11歳(毎年)、14、15、19、27、40歳(現在も追跡中)
調査対象:未就学児のアフリカ系アメリカ人3~4歳(貧困地域に暮らす低所得世帯の子どもで認知能力は学校教育が「難しい」と判定されたIQ70〜85)
ペリー就学前プロジェクトの結果
ペリー就学前プログラムでは現在のところ、以下のような結果が発表されています
調査項目 | 就学前教育を受けた子 | 就学前教育を受けなかった子 |
小学校で特別支援教育の対象者となった子ども | 15% | 34% |
14歳時点で基礎学力の達成となった子ども | 49% | 15% |
留年・休学せず高校を卒業となった子ども | 66% | 45% |
40歳時点で月収2000ドル以上となった子ども | 29% | 7% |
40歳時点で持ち家を得た子ども | 36% | 13% |
40歳時点で生活保護を受給していない子ども | 41% | 20% |
就学前教育を受けた子どもは、そうでない子どもに比べて、教育面でも経済面でも高い数値となりました。一年弱の間、毎日二時間半の就学前教育を受けることで将来に好影響があることが分かったのです。
ペリー就学前プロジェクトは世界中の教育関係者が、就学前教育の重要性を認識するきっかけとなりました。日本も、このペリー就学前プロジェクトから始まった就学前教育推進の波を受けて、2019年より幼児教育無償化を開始しています。
ペリー就学前プロジェクトが示す就学前教育のメリットと注意点
ペリー就学前プロジェクトにより就学前教育が将来に影響を与える影響が立証されましたが、子どもは就学前教育でどのような能力を身に付けるのでしょうか?
非認知能力教育の重要性
結論から言うと、就学前教育によって成長するのは「非認知能力」だと結論付けています。非認知能力とは、「意欲、協調性、粘り強さ、忍耐力、計画性、自制心、創造性、コミュニケーション能力」など、数値では計れない能力です。
非認知能力が向上することで、勉強へ熱心に取り組むようになったり、友人や先生の支援を適切に得られたり、学校生活や社会人生活を上手く生き抜く力も向上するのだと言えるでしょう。なお、就学前教育による認知能力(IQなど)の変化は見られないことが分かっています。
今分かっているのは、就学前教育で「非認知能力」が向上するということだけです。
就学前からスパルタ教育をする塾に入れても、忍耐力などの非認知能力は伸びるかもしれませんが学力に影響を与えるとは断言できないので注意しましょう。
幼児期は学習意欲を伸ばす好機
就学前教育によって子どもの将来に好影響を及ぼすもう一つの要因に、3~4歳が最も学習効率がいい時期という理由があります。脳科学では子どもは3~4歳の間に「学ぶ意欲」が最も成長し、それ以降は年々学ぶ意欲の習得が難しくなっていくと考えられています。
つまり3~4歳で、学ぶことの楽しさや新しいことを知りたいという好奇心を知ることが出来なかった子どもは、後から学ぶ意欲を身に着けることが難しいと考えられているのです。
一見、5歳以降の子どもに熱心に教育をしようとしても意味がないと聞こえるかもしれません。しかし、これは裏を返せば積極的な学びの機会がある幼稚園に3歳頃から入園すれば、小学校以降は自発的に勉強するようになる可能性が高いということです。
もちろん小学生以降のお子さんに熱心に教育するのが無駄というわけではありません。
しかし教育費として捻出できるお金が限られているのであれば、幼稚園や保育園の段階でアクティブラーニング等を実施している園に入園させるほうが効率の良い投資になると言えるでしょう。
自宅で取り組むペリー就学前プロジェクト
ペリー就学前プロジェクトが示したのは「就学前教育により非認知能力が伸びること(=非認知能力が高いと将来に好影響を与える)」、「就学前は学習意欲を伸ばす黄金期であること」の2つでした。
つまり、この2つの要素を考慮すれば幼稚園や保育園に入れなくても子どもの将来に好影響を与えることが出来ます。
ここではペリー就学前プロジェクトの結果を基に家庭でどんな教育を施せばいいのか見ていきましょう。
ペリー就学前プロジェクトで定義した「良い就学前教育」
ペリー就学前プロジェクトではアクティブラーニングを子ども達に行わせることで、子ども達の非認知能力を育てています。そのため家でもアクティブラーニングを導入できれば、ペリー就学前プロジェクトで示された好影響と同じ効果を得ることが出来ます。
アクティブラーニングとは、子どもが自主的に学びたいと思えることを学習させる教育方法です。そのため家では子どもの自主性を重視して子どもに学習させてみましょう。
実際に家庭でできるアクティブラーニングには下記のようなものがあります。
- 子どもに今日あった興味深い話をさせる
- 幼稚園や保育園であった面白い話をさせる
- 少し難しい玩具や教具をやらせる
- 子どもに自分の服や食べたいものを選ばせ、理由を説明させる
上記のように親の支援も日常生活の延長線上で全く問題ありません。
さらにお友達と一緒に行うのも効果的です。幼稚園や保育園に通っていて一緒に遊ぶ機会があれば、子ども同士で会話をさせたり協力して難しい教具をやらせるだけでも大きな効果があります。
キーワードは子どもの「学びへの意欲」
実際に家でアクティブラーニングを導入する時は、手法に固執するのではなくあくまでも「学びの意欲」を代表する非認知能力を育てるように意識しましょう。
子どもの学びを支援する姿勢のコツも4つ紹介します。
- 教具や玩具を用意しても子どもが興味を持つまで待つ
- 子どもが躓いていても、すぐに手助けしない
- 子どもと会話をしながら進める
- 問題解決の姿勢を褒めるようにする
自分で考え、行動し、目的を達成したり、失敗を修正したりして、子どもは対応力、創造力、表現力などの非認知能力を養います。子どもに学ぶことを強制するのではなく、あくまでも子どもが「学びたい!」と自主的に取り組めるような環境を作ってあげることが大切です。
実際にどんな玩具や教具を使えばいいか悩んでいる方は下記のニキーチン教育の記事が参考になるはずです。ニキーチン教育は、自主性を含めた非認知能力を養う家庭教育理論です。家庭内だけで教育をする余裕がある方や、家でも楽しんでも学ばせてあげたいと考えている方はぜひご覧ください。
ニキーチン教育の特徴である、積み木も紹介しておきます。
実際に購入された方のレビューも合わせてご確認ください。
ペリー就学前プロジェクトによって示された就学前教育の価値
ペリー就学前プロジェクトは、幼児期の教育が子どもの将来に大きく影響することを示した研究です。就学前教育によって、非認知能力を養うことが子どもの将来の教育面や経済面に効果を及ぼすことが分かりました。
ペリー就学前プロジェクトによって明らかにされた就学前教育のメリットをもう一度確認しておきましょう。
早い時期からの教育ほど効果が高いとされるペリー就学前プロジェクトは、自宅での応用も可能です。ポイントは、子どもの非認知能力を高めること。知育玩具や身近な材料を使って、子どもに「なぜ」「どうして」「どのように」と能動的に問題を解決させることを意識しましょう。
ぜひ、家庭でペリー就学前プロジェクトを活用して子どもの学びへの意欲を高め、小学校以降での学習能力に役立てたり、将来のための「生きる力」を育んであげてください。