子供にピアノを習わせたい!何歳から始めるべきか?

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子どもの習い事として、ピアノは永遠の憧れかもしれません。自分がやっていたという親御さんも、やってみたかったという親御さんも、自分の子どもにピアノを習わせたいと願う人は少なくないのではないでしょうか。

では、何歳から始めるべきなのでしょう? さすがに1歳では早そうですが……。今回は、子どもにピアノを何歳から習わせるべきか、4つの観点から考察します。

ピアノを何歳から始めるべきか

ピアノを始める年齢というのは、早ければ早い方がいいというわけでもありません。
発表会やコンクールで弾くようなグランドピアノは、小さな子どもには大きすぎて弾きこなせないからです。

皆さんが子どもにピアノを習わせたい理由はなんでしょうか?

「頭が良くなると聞いたから」
「音感やリズム感を身につけてほしい」
「将来ピアニストになってほしい」

など目的は人それぞれあると思います。
今回は次の目的別に、いつからピアノを始めたら良いのかをまとめました。

絶対音感を育む

Smiling baby playing a toy piano while learning music.

人間が獲得できる音感には、絶対音感と相対音感の2種類があります。相対音感は訓練すれば大人でも得られるもの。しかし、絶対音感は小さいうちにしか身につかないといわれているのです。

音楽心理学を専門とする、「一音会ミュージックスクール」の榊原彩子氏によると、絶対音感保有者が音楽のレッスンを始めた年齢で最も多かったのは5歳だと、いう調査があるそう。非保有者だと6~7歳だったそうです。また、音楽家600人以上を対象にした調査では、4歳以前に音楽のレッスンを始めた人の40%が絶対音感を持っていた一方、9歳以降に始めた人で絶対音感を持っていたのはたった9%だったそうです。これらの調査結果を考慮すると、絶対音感を身につけるためには、遅くても5歳までにピアノを始めるのがよさそうですね。

脳を発達させる

ピアノの練習によって脳が発達するという説は近年、多くの人に支持されています。絶対音感養成プログラムを提供している一般社団法人・日本子ども音楽教育協会の理事長・滝澤香織氏によると、右手と左手を同時に使うピアノは、右脳と左脳の両方を活性化させるそう。

右脳と左脳のあいだには、神経繊維が2億本ほど詰まった「脳梁」と呼ばれる大きな束がありますが、左右の脳をバランス良く使うことで、脳梁はより太く育ち、左右の脳の伝達もより円滑になるのです。脳梁の発達のためにも、左右の手指を平等に使うピアノはとても効果的なのです。

(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|ピアノは “脳を育ててくれる” 楽器である。

精神医学を専門とするジェームズ・ハジアク教授(米バーモント大学)らの研究も、楽器を練習した子どもほど、集中力などに関する脳の部位が発達していることを明らかにしました。ピアノをはじめとする楽器の演奏には、指を正確に動かしたり、音を聞き取ったり、楽譜を読んだりなどの緻密な作業が要求されますからね。

脳には、発達しやすい年齢というものがあります。米国の高名な人類学者リチャード・スキャモン(1883~1952)によれば、20歳時点での脳の発育度を100%とすると、4歳ですでに約80%、6歳では約90%にもなっているそう。それ以降の発達は非常にゆるやかです。
つまり、脳が急激に発達している4歳までのあいだ、脳に刺激を与えることが重要だといえます。すると、できれば4歳までに、遅くとも6歳になる前にはピアノを始めているべきだというわけです。

 

体は充分に発達しているか

子どもの能力を伸ばすには早いうちからピアノを始めたほうがよいとはいえ、肉体的な制約というものがあります。やはり、体幹が発達して椅子に座れるようになるまでピアノは弾けないでしょうし、鍵盤を押すには力も必要です。子どもは何歳からピアノを習えるのでしょうか?

【敏感期の種類】 【敏感期の年齢】
言語の敏感期 話し言葉:7ヶ月~3歳前後
文字:3歳半~5歳半
秩序の敏感期 6ヶ月~3歳前後
感覚の敏感期 感覚的印象の探求、溜め込み:0歳~3歳
感覚的印象の整理、分類、秩序化:3歳~6歳
運動の敏感期 運動機能の発達:0歳~3歳
洗練、調整された運動:3歳~6歳
数の敏感期 4歳~5歳

執筆や講演活動を行っているピアノ講師・笹田優美氏によると、ピアノは幼児の体にとって大きいだけでなく、指に負担もかかるそう。そして、体の骨格が安定するのは「6才前後」だそうです。

もちろん、発達の速度は人それぞれ。子どもによってピアノを始めるのが何歳からなのかは異なります。笹田氏によれば、小学生になって「身体と脳のバランスが整ってくる」のを待ってからでも遅くはないそうです。

とはいえ、小学生になるまで音楽に触れないというわけではありません。上述のとおり、4歳までに人間の脳は大部分が形成されています。笹田氏によれば、リトミック(身体を用いてリズムを学ぶ教育法)やダンスなど、体を通じて音楽を感じる体験がおすすめだそうですよ。

じっと座っていられるか

ピアノを習うのであれば、大人しく椅子に座り、先生の指示に従わなければなりません。それにはある程度の肉体的・精神的成長が不可欠ですね。このような能力は何歳くらいで身につくのでしょう?

お茶の水大学子ども発達教育研究センターが2004年に発行した『幼児教育ハンドブック』によると、体を自分の思い通りに動かせるようになるのは2歳から。指先の動きも急速に発達するそうです。しかし、全身のバランス感覚が発達するのは4歳からなのだとか。

そして、大人の指示に従えるかどうかは、子どもの個性によって全く異なります。素直に従う子もいれば、空想に夢中で話を聞いていない子も、周囲のことに気を取られやすい子もいるでしょう。しかし、だからといって教室に通わせないよりは、習い事を通じて落ち着いた態度を身につけさせるほうが建設的ですね。

ピアノを習うメリット

さて、ピアノを何歳から習うべきかがわかったところで、立ち止まって考えてみましょう。どうして子どもにピアノを習わせたいのでしょうか? 「ピアノが弾けるようになる」以外に、どのようなメリットがあるのでしょう。また、上で述べたようにピアノを弾くことが脳を活性化させるとはいえ、「脳の活性化」にはどのような意義があるのでしょうか?

外国語が得意になる

でもご紹介したように、幼少時に音楽のレッスンを受けていると外国語を習得しやすくなることを示した研究があります。音に敏感になるため、母語にはない外国語の音を聞き取ったり、脳内での処理能力が高まったりするそうです。

たとえ音楽のレッスンを子どものうちにやめてしまっても、その恩恵はずっと続くそう。英会話スクールにお金をかけるより、効果があるかもしれません。

「生きる力」が養われる

「知能指数」を意味するIQ(Intelligence Quotient)は多くの人が知っていると思います。では、近年注目されているHQ(Human Quotient)――「人間指数」はどうでしょうか?

認知神経科学を研究する澤口俊之教授(武蔵野学院大学)によると、HQとは「目的・夢に向かって、社会の中で協調的に生きるための脳力」ワーキングメモリ、一般知能、自己制御、注意力、問題解決能力など、さまざまな要素を含んでいるそうです。そして、塾に通ったり、スポーツや習字、英会話を習ったりしている子どもに比べ、ピアノを習っている子どものHQは突出して高いそう。その理由を澤口教授は「両手で微妙に違う指の動きができること」と「譜面を先読みして覚えて後追いしながら弾くこと」だと推測しています。

子どもが非認知能力を養う上で重要だと提唱するサイクルは、以下の4つです。

 【重要サイクル】
1. 夢中になる

 2. 何かを達成する
 3. 壁にぶつかる(挫折する)
 4. 克服する

ピアノの練習によって脳が活性化された結果、目的達成のため主体的に生きていくのに必要な能力が育つようです。机に向かっての勉強だけでは得られないHQが育つことは、ピアノを習う大きなメリットだといえるでしょう。

ピアノを習うのに必要な費用

子どもにぜひ習わせてみたいピアノですが、やはり気になるのはお金ですよね。レッスン代や楽器の購入費用など、どれくらい必要なのでしょう?

全国に展開する「ヤマハ音楽教室」の小学生向け「ピアノコース」は、月3回・1回30分で7,000~9,000円(税抜)。入会金・施設費・教材費が別途発生します。個人のピアノ教室だと、もっと安くなることが多いようです。

ピアノには大きく3種類があります。発表会で弾く大きなグランドピアノ、家庭に置きやすいアップライトピアノ、夜でも練習できる電子ピアノ。総合楽器店「島村楽器」の公式サイトに掲載されている価格は以下のとおりです。

 グランドピアノ:129万6,000円(税込)~
 アップライトピアノ:43万2,000円(税込)~
 電子ピアノ:2万8,800円(税込)~

やはり、電子ピアノならば圧倒的に安いですね。音だけでなく鍵盤の重さやフットペダルの有無など、本来のピアノとは異なる点が多いとはいえ、価格の安さは習い事の続けやすさにつながります。プロのピアニストを目指すのでなければ、電子ピアノから入る選択肢も充分にありうるでしょう。

他にも、子どもの習い事にかかるお金や教室などの選び方を紹介した下記記事もありますので、ぜひ参考にしてくださいね!

まとめ:ピアノを始めるならなるべく4歳までに

これまでの説明を振り返ってみましょう。絶対音感を会得するなら5歳まで、脳の発達を考えると6歳まで、骨格が安定するのが6歳ごろ、全身のバランス感覚が発達するのは4歳から。

これらを総合すると、ピアノは4歳~6歳のあいだに習い始めるのがよさそうですね。くわえて、脳の発達のためには、4歳より早く音楽教室に通わせるのが効果的のようです。

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ぜひ幼少期に習っておきたいピアノ。高価なピアノを買えなくても、諦めるのは早いですよ!

代表的なピアノ教室を幾つかまとめましたので、お探しの方はぜひ参考にしてください。

【東京23区 ピアノ教室情報】
 ① PIANNO学園 千代田区九段北2-4-1
 ② レインボー・インターナショナルM・S(西麻布校) 港区西麻布3-17-11
 ③ ザ・ネスト・YAMAHA・スクール 港区東麻布3-4-7

 ④ The Piano School of Tokyo 港区南麻布3-5-13
 ⑤ 山野楽器キッズ 目黒区自由が丘3-7-17 

 参考記事


・StudyHackerこどもまなび☆ラボ|絶対音感はどう養う? 子どもに身につけさせたい、絶対音感と相対音感のトレーニング法。
・StudyHackerこどもまなび☆ラボ|ピアノは “脳を育ててくれる” 楽器である。
・StudyHackerこどもまなび☆ラボ|楽器演奏により脳が発達することが研究で明らかに。おすすめは「7歳までに」始めること。
・国立国会図書館デジタルコレクション|なぜ絶対音感は幼少期にしか習得できないのか? : 訓練開始年齢が絶対音感習得過程に及ぼす影響
・公立はこだて未来大学|身体的な発達心理学
・Roland|ピアノを始める前に知っておきたい5つのこと ~その1~
・お茶の水女子大学|乳幼児の発達の概要
・LinkedIn|How the Human Quotient Improves Careers and Companies
・キャリコネニュース|ビジネスパーソンの力は「人間性知能HQ」で測れる!? 脳科学者・澤口俊之氏が「脳力」の鍛え方伝授
・ピティナ|今こそ音楽を!第3章 脳科学観点から~澤口俊之先生インタビュー(1)
・ヤマハ音楽教室公式サイト|ピアノコース
・島村楽器|鍵盤楽器
・島村楽器オンラインストア|電子ピアノ


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