自己肯定感を育むだけじゃない!心と体の免疫力アップにも効果を発揮する今注目のミュージカル教育とは

+5

みなさんは「ミュージカル教育」という教育方法をご存知でしょうか。日本ではまだ馴染がなくご存知でない方も多いかもしれませんが、ミュージカルには歌・ダンス・お芝居が含まれることから、「心」・「体」・「頭」の全てを育むことができる欠かせない教育法の1つとして欧米などでは確立されています。

子ども達がミュージカルを通じて自分に自信を持つことで自己肯定感が育まれ、さらに心と身体のバランスが保たれることで免疫力向上にも効果を発揮していることから、日本でも今注目度急上昇中の教育法なんですよ。

そこで、まだミュージカル教育を知らないというみなさんのために、2008年に日本で最初にミュージカル教育を行う法人を設立した草分け的存在、「JOY Kids‘ Theater」の代表理事である夏海清加氏にミュージカル教育の目的や効果を直撃インタビューしてきました!

取材協力者プロフィール
JOY Kids’ Theater 代表
夏海 清加 / SAYAKA NATSUMI
■公式HP:
http://joyhome.or.jp/
佐賀県出身。明治大学卒業。在学中演劇学、教育学を学ぶ。中学校/高等学校国語科教諭課程履修。小学校英語指導者資格取得。4歳からクラシックバレエをはじめ上京後、舞台、TV、映画等でダンサーとして多数出演。2005年にロサンゼルスへ単身短期ダンス留学。2007年単身ニューヨークへ。ニューヨーク大学にてMusical Educationを学びながら、ニューヨークのブロードウェイに多数輩出しているキッズミュージカル団体Random Farms Kids Theaterにて約2年、演出助手/ステージマネージャーとしてミュージカルメソッドをツールとした教育のノウハウを学び、経験を積む。またニューヨークのGorgeous Entertainmentにて舞台制作のインターン経験も積む。2010年よりイタリアレッジョエミリア教育を学び、ミュージカルや芸術を通した教育メソッドを確立。2008年夏に帰国。同年JOY Kids’ Theater設立。2012年非営利活動法人化。

 

ミュージカル教育は、子どもの可能性と人間力を育む教育

――ミュージカル教育とは具体的にどのような教育法なのでしょうか?

実は「ミュージカル教育」という言葉はまだ日本では正式に定義されているものではありません。JOY Kids‘ Theaterでは「ミュージカル教育」のことを、ミュージカルという総合芸術を使って子ども達一人一人の可能性を最大限に引き出す教育だと考えています。

例えば、オペラだと音楽がメインですし、演劇(ストレートプレイ)だとお芝居がメインで歌やダンスはほぼありませんよね。ですが、ミュージカルには必ず歌・ダンス・お芝居が含まれるんです。歌では音楽を用いて、ダンスでは身体を使い、お芝居では言葉や思考など頭を使います。つまり心・体・頭の全てを使って表現できるのがミュージカルなんです。

ダンスという踊りで身体表現を行い、音楽や歌で感情を伝えていきます。単純に歌って終わりではなく、ミュージカルはそのストーリーの中で、悲しい・嬉しい・怒りなどの感情やキャラクターの人生を音楽に乗せて表現するんです。そして役としてのセリフを意識しながら、つまり思考を巡らせながら言葉で表現します。

まさにこの総合的芸術であるミュージカルをツールとして、子ども達一人一人の可能性を最大限に引き出すのがJOY Kids’ Theaterのミュージカル教育での一番の特徴ですね。

ちなみに歌って踊って演技することはかなり大変なことなんです。当スクールに通う子ども達も「ミュージカルって国語・体育・音楽・英語・算数も全部一緒にやっているね」とよく言っています。

 

ーーJOY Kids’ Theaterのミュージカル教育では具体的にどういうことを学べるのでしょうか?

一言でいうと「夢をカタチにする力」です。豊かな感性や表現力、コミュニケーション力はもちろん、思いやりの心や思考力を育んでもらいたいと考えています。

当スクールでは、基本的にミュージカルの技術面は教えていません。歌の技術、ダンスの技術、お芝居の技術というものは二の次です。

なんでここでターンをするのか、なんでここでジャンプをするのか、なんでここで右手を上げるのか。その意味だけをダンスの講師が伝えて、それを自分ならどう解釈をして、どう右手を上げるのか。その時のどう表現するのか。そこは子ども達自身で考えて行動してもらうことにしているんです。そうしているうちに、「自然と技術もついてくる」というのが私達の基本的な考えなんです。

また技術に注力してしまうと、それは自分の目標や、将来就きたい職業のためにだけという観点になると思うんですよね。なので「自分自身に自信を持つ」「成功体験を積む」「チームワークを築く」「他者と比較しない」など、こういったことを幼少期からしっかり育んでもらって、将来どんな職業を選んだとしてもすべてに通じる教育をしていきたいと考えています。

もちろん、中には将来ダンサーになりたい!女優さんになりたい!ブロードウェイに立ちたい!という子ども達もいます。そんなエンターテイメント界のプロを志す子ども達にはしっかり技術も身につけられるよう、当スクールでは全員現役のダンサーや俳優であり教育者(指導者)が講師として教えています。

ただ、どれだけ技術を磨いても、自分自身に対する自信がなければオーディションなどで配役を勝ち取ることができません。まずは技術を磨く前に、自分自身に対する自信や自己愛、自己肯定感を育む。もしくは子ども達が「こうなりたい」という願望や目標を明確にして、想いを育む。これが弊社のミュージカル教育の方針としています。

一般的にはミュージカル教育と聞くと、ミュージカルの技術を教えるものと捉えられがちですが、JOY Kids’ Theaterのミュージカル教育というのは、子ども達の可能性を引き出したり、寄り添いながら、技術ではなく人間力を育むものなんです。

比較しない教育で、自己肯定感を高め免疫力アップ効果

ーーミュージカル教育を受けるメリットや教育効果を教えてください。

メリットはミュージカルを通して子どもの自信を育み、可能性を最大限に引き出すことができる点ですね。

今の日本の教育では子どもの達の自信を育みづらくなっていると感じています。

たとえば、当スクールに来ている親御さんの心配事の一つに、子ども達のテストの点数が挙げられます。テスト結果からは、どこを間違ったのかという「×」にフォーカスしがちじゃないですか。だから80点をとっても100点じゃないというところを見てしまいがちで。結局正解を点数で求めてしまう傾向があると思うんですよね。

他にも、子どもを兄弟や他のお子さんとつい”比較”してしまいがちです。「お兄ちゃんはこんなにできるのに」「妹はこうなんです」とか。実はそういった比較から自信のなさというのは生まれてしまうんです。

しかし、当スクールでも12年前から一貫して伝えていることが、ミュージカルではその子自身が正解ということなんです。比較も決してしません。ミュージカルでは点数は一切関係なく、その子が発した言葉であったり、その子が奏でた音楽であったり、その子が表現したダンスそのものが素晴らしい正解というスタンスなんです。言ってしまえば、間違いなんて1つもないんです。

あなたはあなたのままで素晴らしいということを、総合芸術であるミュージカルを通して体現できるんです。もちろん役としてキャラクターはあるのですが、そのキャラクターをどう表現するかは、その子自身の解釈に任せます。そこに正解はないので。それこそが唯一無二の自分を表現できるものなんです。

世界に1人しかいない自分の命というものをどう表現していくか。それはすべてが正解で、誰かの心を感動させて伝えられるものなんです。

他者と比較せずに「ありのままの自分」を表現することをミュージカルを通して成功体験を積み重ね、自己肯定感や自己愛を育む。結果、子ども達のチャレンジ精神が芽生え、”何か夢や目標に挑戦しよう””自分なら達成できる”という自信を育むことができるんです。ですので1つのツールとしてミュージカルを取り入れているというのが、当スクールのミュージカル教育の一番の醍醐味と言えますね。

子どもの自信を育み可能性を引き出すこと以外にも、教育効果はたくさんあります。ミュージカルは、心・身体・頭の全て使う立派な運動であり、「心」「身体」「思考」の成長が大いに期待できます。

また、子どもの免疫力向上やストレス解放効果もあると言われているんですよ。

 

無くした自信を取り戻して「出来ない思考」を「出来る思考」へ

ーーミュージカル教室はどんなお子さんに向いていますか?

すべての子ども達に通じること、日々の成功から得る達成感ですとか自己肯定感や自己愛を養うことが当スクールの目的ですので、子ども達の性格や個性で判断するものではないですね。

ただ、学校の先生やお友達とうまくいかない子、成績が伸び悩み勉強を楽しいと感じなくなってしまった子など、なにかしらの悩みを抱えている方もいらっしゃいます。

それこそ先程お話ししたように、誰かと比較して自信を無くしてしまっていたり、テストの点数だけで判断して良し悪し決めてしまったりというパターンなんですよね。

そういう子ども達は、これまでの「出来ない思考」をミュージカルを通じて自分に自信をつけていくことで「出来る思考」に変わっていき結果的に精神面も豊かになっていくんです。

 

人生の7割が決まる6歳頃までにはじめるとより効果的

ーー何歳くらいからはじめるといいのでしょう?

一番幼い子で1歳半から当スクールに通っている子がいますが、私としては胎教からやりたいくらいです。赤ちゃんは妊娠5週目にはすでに脳みそができています。その頃からお母さんの発している言葉や環境によってお腹の中で育っているんです。

ただ、何歳までに始めるのがベストかという観点ですと、ミュージカル教育は6歳までにはじめるとより効果的です。

なぜかというと、6歳までに人生の7割が決まるといってもいいほど、脳科学と心理学両方で顕著なことなんです。幼児体験がその子の価値観や信念、観念というものを決めるんですよね。

なので6歳までに自己肯定感であったり、他者と比較しない環境できちんと自信を育むことができるかが鍵となってきます。

子どもが成長段階だと、たとえば言葉が遅かったりとか、トイレトレーニングなどで親御さんたちはついつい心配から比較してしまうことがあると思います。「〇〇ちゃんはもうおむつがとれているのに…」とか、「〇〇くんはこんなにお喋りができているのに…」といように、比較がもう始まっているんです。

2歳とか3歳になって、お食事をこぼしたりすると、「こぼしちゃ駄目!」「何でできないの?」なんて怒ってしまったり。そこで自然と子どもは自己肯定感が低くなっていくんです。

なので、2、3歳の頃からミュージカルのように生きているだけで素晴らしいということを感じられる環境があること、思いっきり自分自身を表現できる環境があることで、そういう点でも幼い頃からミュージカル教育を受けるのがベストなタイミングと感じています。

自分ではない他者を演じることで、自分自身と向き合える

――他者と比較をしないことが大事とのことですが、子ども達からすると、主役と脇役のように演じる役によって、コンプレックスを抱いてしまうことはないのでしょうか?

当スクールではすべてが主役という概念を伝えています。

役の大小は一切感じることがないですね。もちろん配役というのはありますので、なんでうちの子がこの役なんですか?とか、お子さんの役に対して満足できない親御さんもいなくはないです。本当にごくわずかですけれど。

当スクールに初めていらした方とかは、そういう疑問を持つ方もいらっしゃいますので、まずは私たちの理念や価値観をしっかりとお伝えしています。

「誰が主役で脇役か」ここでもう比較が起こっているんですよね。それは主役が格好いいとか、主役が目立つんだという枠組みですよね。主役=凄いみたいなとらえ方だったり。

そういう解釈の仕方は、当スクールに入学した方々は、一切なくなっていますね。なぜならステージに立つと子ども達が全員主役に見えるように工夫をこらしているからです。

1人1人が輝いて主役になれる舞台づくり」というのが1つの基盤にあります。

これまで様々なご家庭とご縁をいただきましたけど、やはり、主役は主役にしてほしい!という親心といいますか、誰かと比較させたい、競争させたいといった正解を求める親御さんも過去にはいらっしゃいました。「主役=100点!脇役=50点」のような捉え方をされる親御さんには、お子様の本質や可能性をとにかくお伝えします。

そこのギャップというのか、当ミュージカルスクールは比較する場所じゃないんですよとお伝えたとしても、理解いただけなかったということは過去にありました。ただ10年前は、まだまだこのミュージカル教育は日本において前衛的なことだったので、そこへのギャップが埋められない親御さんが多かったんですけれど、ここ5年くらいはむしろこういう環境を探していました、という親御さんの方のほうが多くなってきています。

まさに正解のない時代にどうすればいいんだろう、というところで現代の学校教育に疑問を感じていたり、うちの子は今の日本の教育のシステムに合わないんだけれど、という方々がいらっしゃるので、そこにうまくマッチできるようになったという手ごたえは強く感じています。

 

――ミュージカル教育では配役はどのように決めているんですか?

プログラムによって毎回変えています。集中プログラムという土日の短期間で1つの作品をつくるプログラムがあるのですが、必ずゼロからスタートするようになっています。

下は未就学児童から、上は大学生までが一緒になって創っていくので、まずは縦割りチームを作ります。その中でリーダーとサブリーダー、あとはバディ制度(パートナーを組む)を取り入れて。その縦割りチームの中で、「今回はリーダーになりたい!」「こういうことにチャレンジしたい!」「前回は演技をがんばったから今回はダンスをメインにがんばりたい!」なんてことを、子供たち全員に自らプレゼンテーションしてもらうんです。

その子ども達の想いを聞いた上で私たち講師が見極めていく感じですね。なので、何かの役をやりたいということではなく、どのポジションどの分野をがんばりたいのかによって配役は毎回変わっていきますね。

またどんな役だとしても、自分ではない他者を演じることで、自分自身と向き合い、自分の感情を表に出すトレーニングにもなります。チームの中の一人として責任を持って自分の役目を果たすことで、結果的に自尊心と自己肯定力を育んでいくんです。同時に役を演じることで、他者への思いやりや共感力が育てられます。

ミュージカル教育で育んだ自信が子どもの可能性を広げる

ーーミュージカル教育を受けた子ども達の変化や成果などエピソードがあれば教えてください。

一番の成果は、当スクールのミュージカル教育でもっともフォーカスしている「自分に自信が持てるようになった」というところですね。当スクールの学びは、今を生き抜くことはもちろんですが、100歳人生と言われる現代、子どもたちがこれからの人生20歳、30歳、、、50歳と各ライフステージで常に折れない自信とリーダーシップで道を切り開いていける力を育てるのがモットーです。

変化や成果のエピソード例を具体的にあげますと…

  • 自分に自信を持つことができたことで、他者と比較しなくなり、学校でも自分から積極的に発言や発表をすることができるようになった
  • ミュージカル教室で心から付き合えるお友達ができたら、お友達との関わり方も自然と身についていて、不登校だった子が学校に行けるようになった
  • 子どもが自分の意見をはっきりと言えるようになったことで、親子で向き合って話し合えるようになり関係が良くなった
  • 子どもの時に受けたミュージカル教育で「チャレンジ精神」や「失敗を恐れない」という豊かな心が育まれているので、受験のときでも自分の可能性にかけてみよう!といって日本のトップクラスの大学をうけて現役合格した

ミュージカルというツールを使って積み重ねた成功体験が、自信や達成感に繋がって、子ども自身の力でどんどん可能性を広げていく。これが当スクールのミュージカル教育で得ることのできる最大の成果ですと、自信を持って言えます。

+5
21世紀の子育てを考えるメディア「How Kids」