レッジョ・エミリア教育とは?世界で評価される理由と家庭でできる実践方法

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みなさんはレッジョエミリア教育という教育方法を知っていますでしょうか?最近では先進的な教育方法として、メディアでも紹介される機会が増えています。

この記事にたどり着いた皆さんはレッジョエミリア教育の事をもっと知りたいと考えているのではないでしょうか?この記事では、皆さんの以下のような疑問を解決していきます。

  • レッジョエミリア教育の教育目標や理念は何?
  • レッジョエミリア教育を受けることによるデメリットは何?
  • 日本でレッジョエミリア教育を受けられる施設や家庭でできる方法はある?

具体的には以下の流れでレッジョエミリア教育について詳しく紹介していきます。

この記事を読み終える頃には、レッジョエミリア教育についての理解が深まり、お子さんや皆さんの教育理念にあった教育方法かどうかが分かるようになっているはずです。ぜひ、最後まで読んでいただき、これからの幼児教育に活用してください。

レッジョエミリア教育は北イタリア生まれの新しい教育方法

レッジョエミリア教育は、北イタリアの小さな町レッジョ・エミリア市で生まれたオルタナティブ教育(*)です。有名雑誌で「世界の最も革新的な10の学校」に選ばれたことで新しい教育方法として世界中から注目を浴びるようになりました。

*オルタナティブ教育とは
学校教育法で規定されていない教育法のことであり、代表的なものにシュタイナー教育やモンテッソーリ教育等があります。探求型、少人数制、無学年制といった方式をとることが多いのが特徴で、思考力や行動力が身に付きやすいと言われています。学費が比較的高かったり、オルタナティブ教育実施校では学校教育法上の卒業資格を得られない場合があるので考慮が必要です。

レッジョエミリアの教育理念は?

レッジョエミリア教育の理念を一言でいうと、「ありのままの子どもの能力を育てる」ことにあります。
詩的な文章で綴られた、教育理念を抜粋するのでぜひご覧ください。

子どもには 百とおりある。
子どもには 百のことば 百の手 百の考え 百の考え方 遊び方や話し方
百いつでも百の 聞き方 驚き方、愛し方 歌ったり、理解するのに 百の喜び
発見するのに 百の世界 発明するのに 百の世界 夢見るのに 百の世界がある。
子どもには 百のことばがある (それからもっともっともっと)
けれど九十九は奪われる。
学校や文化が 頭とからだをバラバラにする。
そして子どもにいう 手を使わずに考えなさい 頭を使わずにやりなさい
話さずに聞きなさい ふざけずに理解しなさい
愛したり驚いたりは 復活祭とクリスマスだけ。
そして子どもにいう 目の前にある世界を発見しなさい
そして百のうち 九十九を奪ってしまう。
そして子どもにいう 遊びと仕事 現実と空想 科学と想像 空と大地 道理と夢は
一緒にはならない ものだと。
つまり 百なんかないという。子どもはいう でも、百はある。

ローリス・マラグツツイ 田辺敬子訳

子どもの個性を奪う既存の教育や社会の生活様式への批判を綴りながら、子どもの個性を埋もれさせないという強いメッセージが込められています。

ではどのように、子どもの個性を育てるのかより詳しく見ていきましょう。

子ども達の表現力を最大限発揮する

レッジョエミリア教育は、子ども達の個性は無限大であるため、作文や絵だけでなくあらゆる形で個性が表現されるべきだと考えています。

そのため、子ども達には「言葉や身振り手振り、そして歌や絵」などのあらゆる芸術活動を勧めます。ここで重要なのは、大人が表現方法や思考方法などを教えない事です。

子どもはいい意味でも悪い意味でも大人の影響を多分に受けます。大人が子どもに物事を教えると、その子どもは教えた大人の価値観の中で思考するようになってしまうのです。子どもの自由な発想を生かすためにも、大人は子どもの発想力から新しい価値観を学ぶ姿勢で子どもに接することをすすめています。

6つのCを育てる

レッジョエミリア教育の理念をより具体的な子どもの能力に置き換えたのが下記の「6つのC」です。

レッジョエミリア教育ではこれら6つの「C」を育むことで、子ども達の能力や可能性を伸ばしていきます。

この中でも幼児教育が発祥のレッジョエミリア教育が特に重要視するのは、「合作・協同作業」と「コミュニケーション」です。この2つの能力が、後に他の4つの基盤となる教育環境を作り上げると考えているため、レッジョエミリアの幼児教育では芸術活動を通して子ども達同士や親と子の関わりあいを重視しています。

レッジョエミリア教育が今求められている理由

レッジョエミリア教育が今注目を集める一つの理由に「AI(人工知能)」があります。近い将来、単純作業など個性を伴わない仕事のほとんどが「AI(人工知能)」に代替していくと考えられているからです。

このAI時代に人に求められているスキルの代表格が創造性です。人工知能が不得意な「新しい課題を発見し、解決策を考えだす能力」をこれからの教育の中で育てていく必要があります。

現代の知識を教え込む教育ではこの創造性は育ちづらいと考えられている一方で、レッジョエミリア教育では創造性を重点的に育てる教育をしています。そのためレッジョエミリア教育は今求められている教育方法として注目されているのです。

レッジョエミリア教育が向いている家庭

レッジョエミリア教育が向いている家庭は、「個性を大切にしたい」と考えるご家庭です。

レッジョエミリア教育では大人から子どもに何かを指示する事は滅多にありません。そのため例えば「運動神経がいい子に育ってほしい」や「音楽の才能を開花させたい」といった願いを叶える教育ではないのです。

レッジョエミリア教育での大人の役割は、あくまでも子どもの成長を見守る事です。子どもの得意は子ども自身が決めるという養育方針に賛同できる方に向いている教育方法といえるでしょう。

レッジョエミリア教育の特徴

「世界で最も革新的」と称されるレッジョエミリア教育。子ども達の個性を尊重する教育方法の特徴を具体的に見ていきましょう。

教育と芸術の両面から育てる

レッジョエミリア教育では、教育の専門家である「ペタゴジスタ」と、芸術の専門家である「アトリエリスタ」によって子ども達を教育と芸術の両面から育てていきます。

例えば絵を描く場面で考えてみましょう。芸術だけなら思いのまま絵を描けばいいのですが、教育的要素を加えるために「見えないものを絵にしてみよう」「アイデアを絵で表現してみよう」など創造力を養うような教育を行なっていきます。このような活動を行なうことで6つのCの1つ、「コンテンツ(具体性)」も育まれますし、「注意力」「理解力」「相対的洞察力」といった能力も磨かれていきます。

プロジェクトと呼ばれるチーム作業

「プロジェクト」と呼ばれるチーム作業によって、1つのテーマを徹底的に掘り下げるのもレッジョエミリア教育の特徴です。プロジェクトは数人の小グループを作ることから始まり、数か月~1年という時間をかけて「何を作るか」「どうやって作るか」「なぜそれを作るのか」などを決めていきます。

このようなチーム作業を通して「自主性」「協調性」「コミュニケーション力」といった力を習得していきます。

振り返りを欠かさないドキュメンテーション

ドキュメンテーションとは、文書だけでなく画像や動画などで子ども達の活動を記録する活動です。活動の記録を振り返ることで、自分たちの取り組みを検証させるためです。また、保護者に記録をシェアすることで子ども達とのコミュニケーションを活発にしたり、保護者自身にもレッジョエミリア教育への理解を深めてもらう機会にしています。

徹底した教育環境

教育と芸術の融合を主日としたレッジョエミリア教育は、環境にもこだわっています。
象徴的なのが「ピアッツァ」と呼ばれる広場のようなスペースです。子ども達が自由に利用できる遊び場のような場所であり、様々な交流が生まれる場所でもあります。主に建物の中心に設置され、教室や図書室、食堂などに囲まれるように作られています。また、大小サイズの異なる「アトリエ」が各教室に併設されているのも特徴的です。アトリエには芸術活動に必要な用具・材料が置かれていたり、ドキュメンテーションや子どもの作品が飾ってあります。自然物(小石・葉っぱ等)も丁寧に保管されており、子どもの興味・関心を刺激することで子ども達の学ぶ機会を後押ししています。

全体的にスクール内でのコミュニケーションが活発になるよう動線を工夫し、子ども達の好奇心を刺激したり、挑戦欲をかき立てたるような設計にしているのです。

レッジョエミリア教育にはデメリットもある?

子ども達の個性を尊重した自由な環境での教育が魅力のレッジョエミリア教育ですが、実はデメリットもあります。

施設が少ない

レッジョエミリア教育が広く認知されてからの歴史が浅いため、まだ実施している施設が少ないのが現状です。日本でも導入しているフリースクールもありますが、他のオルタナティブ教育に比べても施設数が多くありません。

偏差値教育には向かない

レッジョエミリア教育は、偏差値教育における学習能力の向上を目的としていません。子どもの興味によっては従来の教育の枠の中で判断すると、「勉強ができない」生徒になってしまう可能性も否定できません。

将来偏差値が高い大学に通ってほしいと考えている親御さんは、レッジョエミリア教育には向いていないと考えておきましょう。あくまでも子どもの個性や可能性を伸ばすという理念に共感している方向けの教育だと言えます。

「自由さ」が悩ましいことも

現在のところ小学校教育の代わりとしてレッジョエミリア教育を実施している施設はほとんど存在しないため、幼児期にレッジョエミリア教育を受けた後、一般の小学校に入学する事になります。幼児期の自由に楽しく学べる環境から、カリキュラムに従った勉強への環境変化に窮屈さを感じる子どもも少なくありません。

日本でレッジョエミリア教育を実施する施設はあるの?

まだ施設数は少ないものの、日本でもレッジョエミリア教育を実施している施設はあります。ここでは、「東京」「神奈川」「大阪」にある5つの施設を紹介しましょう。

家庭でもできるレッジョエミリア教育

居住地の近くに施設がなくても、レッジョエミリア教育は家庭で実践できます。レッジョエミリア教育のエッセンスを効かせた、簡単な「おうちスクール」を紹介しましょう。

家にあるものを使って工作

教育と芸術を組み合わせて学ぶのがレッジョエミリア流。家にあるものを使って創造力を高める工作にチャレンジしましょう。たとえば、牛乳パックやダンボール箱、ペットボトルなど家にあるものでOKです。

ポイント注意したいのは、何を作るかは子どもに決めさせること。大人は必要な素材だけを数種類用意しておき、「お題」を出すのがよいでしょう。お題は具体的なものではなく、「楽しいもの」など抽象的な方が子どもの創造力を刺激します。

もし、どうしても創作がすすまないようなら、いくつか動画を見せて子どもに作りたいものを選ばせてあげるのがよいでしょう。そして、「なぜ〝それ〟を作るの?」と理由を聞いたり、完成後に「作ってどうだった?何が難しかった?」など質問したりすると、よりレッジョエミリア教育らしくなります。

親子で話し合う

親子で話し合うことは、子どもの思考力や表現力を伸ばし、コミュニケーション力を高めます。レッジョエミリア風に話し合うなら、いくつかコツがあります。

ポイント

  • 話し合うテーマを決める。
  • なぜ話し合うのか理由を伝える。
  • 大人は進行を意識して子どもの発言を促す。
  • いいアイデアを「いいね!」と承認する。
  • 「なぜ」「どうやって」を掘り下げる。
  • 問題点を発見させ、改善策を考えさせる。

大人が答えに導くのではなく、子どもの自由な発想に任せてディスカッションを進めるのが大切です。

作品を飾りドキュメンテーションを実施!

レッジョエミリア教育の肝であるドキュメンテーションも家庭で取り組む事ができます。工作を作りっぱなしにするのではなく、創作過程を記録に残し、完成品を飾ることもポイントです。

ドキュメンテーションを実施することで子どもが自分の取り組みを振り返り、次の課題を見つけられます。親子でのコミュニケーションにも役立ちますので、しっかりと大人がサポートしてあげましょう。

レッジョエミリア教育が学べるおすすめ本のご紹介

革新的な教育法として注目されるレッジョエミリア教育は、注目度に比例して解説本なども増えています。ここでは、レッジョエミリア教育が学べるおすすめの本を3つ紹介しましょう。

レッジョ・チルドレンによる実録「レッジョ・エミリアと対話しながら」

こちらの本の著者は、本人もレッジョエミリア教育を受け、さらに「ペタゴジスタ(教育専門家)」としても関わってきたカルラ・リナルディ氏。「保育園に学習プログラムは必要か?」など、レッジョエミリア教育の真髄に迫る17章のテーマで綴られています。

レッジョ・エミリア市が取り組んだ幼児教育の実績「子どもたちの100の言葉」

2001年に日本で開催された「子どもたちの100の言葉展」を記念して出版された本です。レッジョエミリア教育の創設者で教育学者でもあるローリス・マラグッツィによる解説などを含め、レッジョ・エミリア市における幼児教育の実践と研究の結果が記されています。

日本ならではのレッジョエミリア教育「子どもたちからの贈りもの」

日本では、国際幼児教育のパイオニアとして知られる教育者のカンチェーミ・ジュンコ氏と東京大学大学院教育学研究科教授の秋田喜代美氏が共著した一冊です。日本でレッジョエミリア教育を導入するにあたり、ただ模倣的に実践するのではなく、日本の文化になじみやすいよう取り入れた様子などが描かれています。

レッジョエミリア教育で思考力と感性を育てよう!

ここまで、レッジョエミリア教育について特徴や教育理念、デメリットなどを解説してきました。

レッジョエミリア教育では子どもの本来持つ能力を活かして、子ども達の個性を育てることを目標に教育を行っています。最後にもう一度レッジョエミリア教育が特に重要と考えている6つのCを復習しましょう。

  • Collaboration(コラボレーション)……合作、共演、共同作業=社会性やチームワークを養う。
  • Communication(コミュニケーション)……意思疎通=互いに考えを伝え理解し合う。
  • Contet……(コンテンツ)……意味、内容、具体性=自分が意図するものを形にする。
  • Critical Thinking(クリティカル シンキング)……批判的思考=問題を見つけて分析する力をつける。
  • Creative Innovation(クリエイティブ イノベーション)……創造力=新たな何かを生み出す。
  • Confidence(コンフィデンス)……自信=自分の価値や能力を肯定する。

レッジョエミリア教育を実施している施設は限られていますが、子どもの個性や可能性を伸ばすというポイントを押さえれば家庭でもレッジョエミリア教育が実践できます。おすすめの本なども参考にして、ぜひ、先進的な教育方法をニーズに合わせた形で導入してみてください。

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