イエナプラン教育ってなに?教育理念と特徴、問題点を徹底解剖!

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皆さんはイエナプラン教育という新しい教育理論をご存知でしょうか?
イエナプラン教育は近年オランダで積極的に取り入れられているオルタナティブ教育(*)です。最近では日本でも注目を浴びはじめている教育方法でもあります。

*オルタナティブ教育とは
学校教育法で規定されていない教育法のことであり、代表的なものにシュタイナー教育やモンテッソーリ教育等があります。探求型、少人数制、無学年制といった方式をとることが多いのが特徴で、思考力や行動力が身に付きやすいと言われています。学費が比較的高かったり、オルタナティブ教育実施校では学校教育法上の卒業資格を得られない場合があるので考慮が必要です。

この記事にたどり着いた皆さんはイエナプラン教育に興味がある一方、下記のような疑問を抱えているのではないでしょうか?

  • イエナプラン教育が何を目指した教育なのか分からない
  • イエナプラン教育の教育方法は?
  • イエナプラン教育のデメリットも知りたい

今回はイエナプランについてより深く理解してもらうために、下記の流れで解説していきます。

この記事を読み終える頃には、イエナプラン教育が自分のご家庭に合った教育方法なのかが分かるようになっているはずです。お子さんに少しでもいい教育を受けさせてあげたいと考えている方はぜひ最後まで読んで、イエナプランを検討してみてください。

イエナプラン教育ってどんなもの?

現在、主にオランダで普及しているイエナプラン教育ですが、その発祥は1924年のドイツでした。
子供たち一人ひとりの個性や強みを尊重し、自立と他者との共生の習得に重点を置いた教育を目指すため、ドイツのイエナ大学の実験校で始めたのがイエナプラン教育です。

その教育理念から、教科の知識習得を主な活動とする現在の一般的な学校とは大きく異なる教育体系として発展してきました。
そんなイエナプラン教育の目指す姿や、大事にしている理念を詳しく見ていきましょう。

イエナプラン教育が目指す教育理念とは

イエナプラン教育では、人との関わりの中で、自分の長所と短所を把握(自立)し、周囲の人と助け合い貢献していく(協調)ことで、個性や能力を発揮できる生き方になる考えています。

つまり「どんな環境でもどんな人とでも協調性を保ちながら、自分の個性を発揮すること」。これがイエナプラン教育が目標としている人材育成ビジョンです。

イエナプラン教育が大事にする「20の原則」

イエナプラン教育には、「人間について」「社会について」「学校について」の3つのテーマで記された「20の原則」と呼ばれるコンセプトがあります。

長くなりますので、ここでは一部抜粋いたします。

人間について
1.どんな人も、世界にたった一人しかいない人です。つまり、どの子どももどの大人も一人一人がほかの人や物によっては取り換えることのできない、かけがえのない価値を持っています。

2.どの人も自分らしく成長していく権利を持っています。自分らしく成長する、というのは、次のようなことを前提にしています。つまり、誰からも影響を受けずに独立していること、自分自身で自分の頭を使ってものごとについて判断する気持ちを持てること、創造的な態度、人と人との関係について正しいものを求めようとする姿勢です。自分らしく成長して行く権利は、人種や国籍、性別、(同性愛であるとか異性愛であるなどの)その人が持っている性的な傾向、生れついた社会的な背景、宗教や信条、または、何らかの障害を持っているかどうかなどによって絶対に左右されるものであってはなりません。

3.どの人も自分らしく成長するためには、次のようなものと、その人だけにしかない特別の関係を持っています。つまり、ほかの人々との関係、自然や文化について実際に感じたり触れたりすることのできるものとの関係、また、感じたり触れたりすることはできないけれども現実であると認めるものとの関係です。

4.どの人も、いつも、その人だけに独特のひとまとまりの人格を持った人間として受け入れられ、できる限りそれに応じて待遇され、話しかけられなければなりません。

5.どの人も文化の担い手として、また、文化の改革者として受け入れられ、できる限りそれに応じて待遇され、話しかけられなければなりません。

引用元:日本イエナプラン教育協会

この「20の原則」がイエナプラン教育の核となる考え方です。もしイエナプラン教育に興味がある方はまず「20の原則」に共感できるかどうかチェックしてみてください。

日本イエナプラン教育協会のHPはこちら>>>

イエナプラン教育の大きな5つの特徴

「自立」と「協調」を教育理念に掲げているイエナプラン教育は、どのような工夫をしているのでしょうか。ここでは、イエナプラン教育の教育現場における、特徴的な教育方法を5つご紹介します。

1. 異年齢の児童によるグループ形成

1つ目の特徴は、年齢でクラス分けをしないという点です。イエナプラン教育では、4~6歳児・7~9歳児・10~12歳児の3学年が混在したグループに分けて形成します。年度が変わるごとに、7歳児となる児童が次のクラスに移動し、新しく4歳児となる児童がクラスに入る、という形でクラス編成が毎年変化していくのです。

このクラス編成を通し、児童が各グループの年少・年中・年長という立場の変化を毎年経験することで、様々な形での他者との関わり方を身に付けることが狙いです。

2.「リビングルーム」のような学校環境

2つ目の特徴は、学校を家族で過ごす「リビングルーム」のようにとらえている点です。イエナプラン教育では、教室を単なる勉強の場所としてではなく共同生活の場である定義しています。教室内のレイアウトについては非常に自由度の高いものとしており、例えば、実際に下記のような工夫をしている学校があります。

  • 年度初めに子どもたちの話し合いによって、使い勝手を良くしたり自分たちが快適に過ごせるよう模様替えをする。
  • 机やイスなども子どもが動かしやすいような素材のものを使用して、その都度自由に動かせるようにする。
  • 教室内に情報検索用のパソコンを設置する。

過ごしやすい空間を作ることで、子ども達は知的好奇心を満たす活動に集中できるようになるのです。

3.「4つの基本活動」に基づいた学習カリキュラム

3つ目の特徴は、「4つの基本活動」と呼ばれる学習カリキュラムです。イエナプラン教育を導入している学校では、国語・算数・理科・社会などの科目による時間割はありません。

その代わりに、会話・遊び・仕事(学習)・催しという4つの活動を繰り返しながら学校生活を送ります。各活動について、詳しく解説していきます。

  • 「会話」
    同じクラスの友人たちと様々なテーマを設定し、それについてお喋りしたりディスカッションをする取り組みです。決まっていることは、子どもたちは円陣を描くように座り、おしゃべりをする事だけです。あとはテーマを決めず自由にお喋りをします。最近読んだ面白い本の内容を紹介したり、ニュースで見た事件について意見交換したり「会話」の内容は様々です。「会話」は対話サークルとも呼ばれ、自分以外の多様な考え方に触れる機会として重要な活動と位置付けられています。
  • 「遊び」
    音楽に合わせた踊り、演劇作りや学習ゲームを通した表現活動を指します。イエナプラン教育では、「遊び」の中でも協調性を身に着けたり、思考力を養ったりといった教育効果を期待しています。また芸術などの表現活動としての「遊び」は言葉による表現が苦手な子どもの自己表現を助ける役目も担っています。
  • 「仕事(学習)」
    その名の通り勉強をする時間です。普通の教育における学習と違う点は、「子ども達に課題を意識させる点」です。課題解決に向け自立学習と共同学習の2つの手法を使い分けます。自立学習では基本的に喋ることは禁止されます。集中して課題と向き合い、分からないところも自分で考えさせます。共同学習ではグループで意見を交わし、課題解決に向けたディスカッションを経験します。
  • 「催し」
    季節ごとの年中行事や児童の誕生日会
    を開いたりもします。学校生活のメリハリをつけるための週の始めの会・終わりの会の時間もこれに当てはまります。また「催し」では、楽しい・嬉しいといったプラスの感情だけでなく、怒った・悲しいなどのマイナスの感情の共有も大事にされます。他者との関わりの中で生じる様々な感情を共有することで、共同体意識の育成を目的としています。

4. 好奇心を学びに変えるワールドオリエンテーション

4つ目の特徴は、全教科の要素を兼ね備えた総合学習「ワールドオリエンテーション」です。

イエナプラン教育での学習時間には、教科の垣根がなく授業もありません。従来とは異なり、イエナプラン教育では学びの起点はあくまでも子どもです。子ども達が主体的に興味を持ったテーマを一定期間勉強し、時には「会話」や「催し」の機会で学んだことを友人に共有します。

子どもの興味から始まった学びを、一人での思考と他者との議論を通し深めることで子ども達の知力を養っていくのです。

5. 偏見や垣根のない学びの環境づくり

5つ目の特徴は、学校に通う子どもたちの多様性を尊重する精神です。イエナプラン教育の最大の目的は、子どもが他者の多様性に対して寛容になることです。

イエナプラン教育を実践する学校では、早期段階から一般的な学校に馴染めなかった子ども達の入学を積極的に認めています。障害の有無にかかわらず、生徒全員が共に同じ環境で交流し学び合い、互いの個性や違いを知りながら生活します。

多様性に満ちた学校生活を通じて、イエナプラン教育が理想とする「自立と協調」に富んだ人物の育成をしています。

イエナプラン教育のメリット

イエナプラン教育が注目されているのは、教育を受けた子どもに普通の教育では受けられないメリットがあるからです。ここではイエナプラン教育を受けることによって子どもが得られるメリットを3つ紹介します。

1. リーダーシップが育まれる

1つ目のメリットは「リーダーシップを持つ児童の育成に優れている」という点です。イエナプラン教育による学校生活では、子ども達の主体性自立性協調性の育成を養うためにグループワークで学びを深めます。

幼い頃からグループで活動することで、様々な人々と上手に関わる術や、グループのまとめ役となる性質を養っていきます。グループワークに主体的にかかわる中で、リーダーシップが育っていくのです。

またイレギュラーなクラス編成によって、3年に1度というかなり短いスパンで子ども達はクラスの年長者・リーダーという役割を定期的に経験できることも、リーダーシップの基盤になります。

2. 高い自己肯定感の形成

2つ目のメリットは、「子ども達の高い自己肯定感を育める」という点です。多様性に寛容な子ども達を育てるイエナプラン教育では、周りの人全員が自分のことを認めてくれます。

周りの人が自分をどのように認めてくれるか知ることで、子どもは自分の長所を知り自分の認め方を学んでいきます。他者に寛容である教育は自分自身を認める力も養えるのです。

仕事や人間関係など、人生における全ての場面で、自己肯定感の高さは密接に関わってきます。自己肯定感の高さは「生きやすい人生」を手に入れる為に必ずプラスの影響を及ぼすはずです。

3. 子供が楽しく教育を受けられる

3つ目のメリットとしては、「子どもたちも楽しく学べる」という点です。通常の学校に通う子どもたちの中には、学校での授業や強制的な宿題に対するマイナスのイメージから、勉強が嫌いという子どもも少なくありません。

一方で、イエナプラン教育での学習は、子どもが学びたいことを学び、興味の湧かないことは学ぶ必要はありません。
子ども達が自分達の好奇心に従って学ぶことで、「学ぶこと=楽しいこと」と感じ自分で進んで学習するようになるのです。

イエナプラン教育のデメリット

イエナプラン教育は革新的な教育である一方、従来の教育とは大きく違うためデメリットもあります。

1. 偏差値主義の学歴社会とのミスマッチ

1つ目のデメリットは、「偏差値主義の学歴社会と合わない」という点です。現代の日本の高校・大学進学の為の受験では画一的な学習内容の中でいい成績を取る必要があり、その成績は就職活動まで影響が及びます。

イエナプラン教育では、受験の為に必要な知識の学習や、子どもに興味のないことを無理矢理勉強させるようなことはしません。子どもの内面の成長には大きな効果を期待できるイエナプラン教育ですが、いい大学からいい会社に入るための教育でない事は理解しておきましょう。

2. 導入している学校が少ない

2つ目のデメリットは、「イエナプラン教育を導入している学校がまだ少ない」という点です。

イエナプラン教育に興味があっても、近くに学校がない場合が大多数です。また一度イエナプラン教育の学校に入学できたとしても、親の都合で子どもが転校を余儀なくされた場合、継続してイエナプラン教育を受けられない可能性も高くなります。あとから通常の学校に編入してもうまく馴染めず、最終的に子どもが学校に通えなくなってしまう可能性も否定できません。

なぜ今イエナプラン教育が求められるのか

イエナプランに注目が集まっている大きな理由は、今後の予測不能な社会で求められる「課題発見力」を培うための主体的な学びの教育スタイルだからです。

技術革新やグローバル化によって、変化のスピードが速くなっている現代に、国や教育によって体系化された知識では古い情報を教える事になってしまいます。

そのため教育は知識を教えるのではなく、知識を自分から得る方法を教える必要が出てきました

そこで、子ども自身が「自分は何を学習したらいいのか?」という課題設定から考える教育スタイルのイエナプランに白羽の矢が当たったのです。

日本でイエナプラン教育を導入している学校

オランダでは普及しつつあるイエナプラン教育ですが、日本で実施している学校は今のところごくわずかです。ここでは、日本でイエナプラン教育が受けられる学校を4校紹介します(2020年6月時点)。

イエナプラン教育で自他理解に優れた子どもを育てよう

今回は新たな学校教育のスタイルとして、今少しずつ注目度の高まっている「イエナプラン教育」について詳しくご紹介致しました。「自立」と「協調」に優れた人物を育てる教育であるイエナプラン教育は、今後より多様性が重視されるであろう日本社会に必要とされる教育といえます。

最後にイエナプラン教育の5つの特徴を復習しましょう。

イエナプラン教育はこれまでの学校教育とは違い、子ども達の自主性や協調性を育む全く新しい教育です。将来は、「安定よりも社会に変化を起こせるリーダー的な人材になってほしい」と考えているご家庭には、従来の教育よりもイエナプラン教育の方がマッチしているかもしれません。

興味がある方はぜひ本記事を復習した上で、学校見学をしてみてはいかがでしょうか?

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