どんなに泳ぎが苦手な子でも必ず25m泳げる方法!体育指導のプロに聞いてみた

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小学校・中学校の合計9年間において必須科目である水泳。25m(学校のプールの端から端までの長いほう)の完泳はどの小学校でも課題として与えられます。

うちの子、水を怖がっているのに25mも泳げるようになるのかしら?と心配する親御さんも少なくありません。

そこで今回、水が怖いという子ども達はどうしたら苦手意識を克服できるのか。どうしたら25mを泳げるようになるのか、専門家のご意見をうかがわせてもらうべく、スポーツひろば代表の西薗一也氏に直撃インタビューしてきました。

小学校に入る前の幼いお子さんを持つお父さんお母さんにとってもタメになる情報ですので、ぜひ参考にしてみてください。

取材協力者プロフィール
スポーツひろば代表
西薗 一也 / Kazuya Nishizono
■公式HP:http://www.sports-hiroba.com/
東京都出身。一般社団法人子ども運動指導技能協会理事。株式会社ボディアシスト取締役。スポーツひろば代表。日本体育大学卒業後、一般企業を経て家庭教師型体育指導のスポーツひろばを設立。運動が苦手な子どもを対象にした体育の家庭教師の事業をはじめとして、子ども専用の運動教室の開設や発達障害児向けの運動プログラムの開発など、新たな体育指導法の普及に幅広く取り組む。著書に『発達障害の子どものための体育の苦手を解決する本』(草思社)や『うんどうの絵本』『かけっこの絵本』『すいえいの絵本』『ボールなげの絵本』(あかね書房)がある。

プールでの楽しい経験やリラックスできる環境が苦手克服のカギ

――プールが嫌い、水が苦手という子どもに水泳を好きにさせる方法はありますか?

楽しい経験をさせてあげて、まずは水への恐怖心を取り除いてあげることが大事です。そして褒めてあげることです。

例えば大人の背中に子どもを乗せて泳いであげるのも1つの手段です。子どもを乗せながら、たくさん会話をしたり、泳いだりしてリラックスさせてあげる。こうした体験に子どもは純粋に「楽しい!」と感じてくれます。そのあとで、「次は少しだけ〇〇を頑張ってみようか?そのあとにまた先生の背中に乗せてあげるよ!」といってやる気につなげる。そして頑張れた子には「よくできたね!すごいよ!」とたくさん褒めてあげるのです。

「楽しい」体験は、次のステップへの意欲となり、「安心感」は信頼につながります。そして「褒められる」ことで、自分にたいして自信を持つことができるようになります。

また、親御さんの理解と忍耐も必要になってきます。親御さんから見ると、水泳教室に通わせたのに早々に泳げるようにならないと不安に感じることがあります。

ですが、前回はプールサイドにいただけの子が、今日は片足を入れることができた。次は両足を入れることができた。水に顔をつけられるようになった。

徐々に子どもがステップアップしていることに目を向けてあげてください。親からしたら小さな成長に思えても、子どもにとっては大きな一歩なのです。勇気を持って前に進んでいるのですから、慌てず急かさず一つ一つのステップアップを全力で褒めてあげましょう。

「バタ足」より徹底した「蹴伸び」が25m完泳への近道

――ビート板バタ足の練習方法を聞いたことがあるのですが、どれくらい効果的なのでしょうか?

水泳教室によっては、ビート板を使って練習するとよいという指導方法もありますが、うちではビート板は不要だと考えています。理由としては、ビート板を持つとグーっと手から下に力が入り、顔が上がってしまう。ストリームラインが崩れた体勢ではバタ足をしっかり強く打たないと沈んでしまいスムーズに進みません。

最近の研究結果でも出ていますが、水泳上達のコツは水の抵抗を減らすことです。水の中に頭をギュッと入れるとスピードも上がり前に進むという理論です。一方でバタ足は、バタつかせるほど水しぶきが立ち水紋が広がるので抵抗が生まれてしまうのです。

バタ足で力任せに進もうとしても無駄に酸素を消費してしまうだけなので、やはり最初は蹴伸びを徹底的に教えることが大切だと思います。

――25mを泳げる子と泳げない子の違いはどこにあるのでしょうか?

うちの教室に運動は得意だけど、水泳だけは苦手という子がいます。泳げない子ども達を見ていると、少ない筋肉を最大限に利用してパワーで泳ごうとしてしまう特徴があります。

特に運動が出来る子は負けず嫌いな一面があるので、早く泳ごうととにかく一生懸命手足を動かします。ところが、身体に力が入ると酸素を大量に消費してしまい苦しくなる。苦しくなれば、今度は息継ぎができなくなってしまい、最終的には25メートルまで泳げないのです。

バタ足は、足をばたつかせるほど水しぶきが立ちます。膝を曲げてひたすらバシャバシャと蹴っても水を押しているだけで、前に進むことはできません。正しいバタ足は、足が沈まない程度に優しくグーンと膝を伸ばした状態であることなのです。

――泳げない子に25mを完泳させる効果的な方法があれば教えてください。

まず水泳では「バタ足」はおまけのようなものだと考えてください。

クロールの場合は、バタ足よりも手を使った水かきのほうが前に進める要素となります。重要なのは、体を真っすぐにして、ストリームラインという流線型の姿勢がきちんと取れるかどうかなのです。このストリームラインを維持した状態で、上半身でしっかりと進むことができれば息が切れません。ストリームラインを覚えるには蹴伸びの練習が有効です。

蹴伸びで少し壁を蹴ったら、そのまま5メールは進めるのです。そうしたら子どもには「蹴っただけでもう5メートルまで進んだよ!すごいね!」と褒めてあげましょう。その後+1メートル先まで行けたら再び褒めた上で、もっとリラックスして伸びるとより先に進めるよ!少しバタ足を加えたら、次は10メートル先まで行けるよ!と少しずつ指導を加えながら段階的に泳げるようにつなげていきます。

この段階では、泳げた距離が子どもにとっての一番の成功体験になりますので、そこだけを見てあげるようにしましょう。

決して「もっと頑張れ!」などと言って焦らせてはいけません。焦ることで息が上がりやすくなり、苦しくなってしまいます。子どもを追い込まずにリラックスした状態で泳ぐことと向き合わせることが泳げる距離を伸ばすポイントです。

いかにリラックスした状態をキープして、「水は怖くない、泳ぐことは楽しい」ということを教えていくことが指導の肝となります

25mを泳げるようになるために必要なことは3つ!

  1. バタ足やビート板に頼るのではなく、徹底した”蹴伸び”の練習をすること
  2. 泳げる距離が+1mでも伸びたら褒める。段階的に成長していることに注目すること
  3. 決して指導者や親が焦らせない。子どもがリラックスした状態をキープすること

当教室では月4回、25m完泳できるという「25m完泳クラス」があり、運動が苦手な子や発達に障害のある子を教えることも多くありますが、上記の3つを押さえることができれば、どんな泳ぎが苦手な子でも25m泳げるようになります。

ぜひこのポイントを押さえて、今後の水泳練習に活かしていただければと思います。

 

西薗一也氏直撃インタビューvol.5

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