子どもの絵の見守り方|幼児のアート教育

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子どもの絵は、どのように成長していくのでしょうか。親として、どのように見守ると良いのでしょうか。今回は、「アトリエ・ピウ 知育こどもアート教室」の代表を務める今泉真樹先生に、子どもの絵の見守り方について、お伺いしました。

 

取材協力者プロフィール
アトリエ・ピウ 知育こどもアート教室 代表
今泉 真樹 / Maki Imaizumi
■公式HP:http://www.piupiu.jp/child/
東京都出身。アトリエ・ピウ 知育こどもアート教室 代表。桑沢デザイン研究所を卒業後、英ローズ・ブルフォード大学を主席で卒業。ジャン・ルイ・シェレルなど国内外の有名ブランドや宝塚歌劇団のジュエリーデザインなどを手がける。2012年、アトリエ・ピウ 知育こどもアート教室を立ち上げ、子どもの創造力を伸ばすことに焦点をあてた指導を行う。保育 絵画指導スペシャリスト ライセンス保有。新宿区子ども未来基金助成活動【アートミック】アート講師も務める。

 

――子どもの絵はどのように成長していくのか、またどのように成長を見守っていけば良いかを教えて下さい。

お絵かき」は、小さなお子さんから気軽に取り組めるアート。ペンやクレヨンなどを紙にトントン叩きつけたり、こすりつけたりする行為から始まります。子どもたちは、自分の手から生み出される線や色をとおして、様々なことを感じとっています。

よく「うちの子、まだ○○が描けないけれど大丈夫ですか?」と、保護者の方から相談を受けることが多いのですが、心配しなくても大丈夫。絵はみんな同じように成長する必要はない、と理解しておくと、子どもが描く絵に対する不安がなくなるかもしれません。

以下、絵の成長の大まかな流れをご紹介いたしますが、表記してある年齢は、あくまでも目安で、比較的多く現れる年齢域となっています。その中に当てはまらなくても、何ら問題はありませんので、安心して下さい。

 

  • 擦画期(さつがき)

お子さんが初めてクレヨンを手にするのは0〜2歳くらいでしょうか。最初はクレヨンを手にとって眺めたり、なめてみたりと、感触を確かめるかもしれません。それから紙にこすりつけてみたり、たたくようにして点々を描いてみたり、と素材の探求を始めます。絵を描くというよりも、手の運動に近い感覚です。

クレヨンは口に入れてしまうことも多いので、自然由来の安全な素材を選んであげると良いでしょう。まだクレヨンをにぎることが出来ないお子さんでしたら、口に入れても差し支えのないフィンガーペイントや、無添加の食紅を使って、指で表現するのもお勧めです。

ぐしゃぐしゃと擦りつけて描くことが多いので、擦画期と呼ばれ、子どもの絵の始まりとなっています。大人にとっては、いたずらに見えてしまう行為でも、子どもにとっては、意味のあることなので、思う存分やらせてあげましょう。指先をたくさん使って遊ぶことにより、脳の発達にも良い影響を与えます。

 初めて出会うフィンガーペイントにとまどいながらも、不思議そうに観察する女の子(1歳2ヶ月)

 

  • 錯画期(なぐり描き期)

1歳〜3歳くらいになると、なぐり描きを始めるようになります。クレヨンや筆をにぎる力がついてくると、しっかりした線へと変化してきます。この時期の子どもは「何かを描こう」と目的を持って、描いていません。偶然に描けた絵を楽しんでいることがほとんどですから、何か形のあるものを描かせようと、無理強いはしないようにしましょう。子どもが自由に描ける環境を作り、見守ってあげることが大切です。

 

  • 象徴期

象徴期は、およそ2〜4歳くらい。この時期の幼児は、視覚的に見えているものを描いたり、頭で考えてから描いているのではなく、手を動かしながら、なんとなく感覚的に描いています。そして後から、絵に意味づけをするのです。

丸を描いて、「ゆきだるま」や「お母さん」などと、お話しをするようになります。それは見るたびに、どんどん変化していきます。「丸と線だけで、想像をふくらませて、いろいろなものに見立てる」という子どものアイデアは、本当に素晴らしく、いつも感心してしまいます。このように、お絵かきを通して自分の想いを伝えることにより、発想力やコミュニケーション能力も磨かれていきます。

この時期に、「頭足人」といわれる、頭から手や足が出た人物を描くようになります。これは世界中の子どもたちに共通する表現で、大人が「顔」と思っている丸の表現は、その人の存在(体)を表している、とも言われています。

顔から足が出てきて、髪の毛まである、とても可愛い「頭足人」(3歳5ヶ月の女の子)

 

  • カタログ期

個人差がかなりありますが、おおむね3〜5歳くらいになると、記憶力や思考力も発達し、自分の好きなものや、知っている形を描けるようになっていきます。「お花」「車」など、大きさは関係なく並べて描いていくのが特徴で、カタログ期と呼ばれています。自分で「描きたいと思ったものを描く!」という意思が、だんだん芽生え始める頃です。

宇宙に興味のある男の子。土星、星、望遠鏡と並べて描いています。

この頃の子どもは、1枚の画用紙の中に同じような絵をたくさん描いていくことがあります。羅列表現とも言われており、自分の気に入っているものばかり描くので、いま何に興味があるかがわかります。興味はなくても、単純にそのモチーフが描けるようになったことが嬉しくて、たくさん描いている子どももいます。大きくなってからは、あまり見られない特徴なので、後で見返すと微笑ましい絵ですね。

 

  • 図式前期

幼稚園や保育園に入ると、運動会やおいもほりなどのイベントの後にその絵を描く、といった絵画指導が始まります。そこで意味や目的を考えて、絵を描く経験をしていきます。まず自分を描き、空、地面、と線を描いて区切る場合が多く、空間を平面的にとらえた「図式前期」と呼ばれる時期になります。

客観的な視点ではなく、自分が中心にいて、「自分の上には空がある」「自分の下には地面がある」というように、物との位置関係を二次元でとらえて、描いているのが特徴です。地面を表す線は、「基底線」と呼ばれます。

一般的には、幼稚園の年中生くらいから小学校の中学年くらいまで、このタイプの絵を描くことが多いのですが、お子さんによっては大きくなっても、ずっと描き続けます。立体的な絵を描けないからといって、全く心配する必要はありません。

幼稚園年中生の女の子。絵が大好きで、いつも熱心に取り組んでいます。

この時期の子どもは、「レントゲン描法」といって、実際には見えていないのに、透けているように描くことがあります。例えば、家の形が描かれていて、外からは部屋の中は見えないはずなのに、部屋の中を描く、バスや車の中を描く、など特徴的な絵です。

車が大好きで、このレントゲン描法の絵を、幼稚園生からずっと描き続けている小学5年生の男子。どこまでこの絵を描き続けるのか、今後変化するのかしないのか、楽しみです。

 

  • 図式後期

物と物の重なりや、奥行きのある絵が描けるようになってくると、図式後期となります。物の位置関係を三次元でとらえ、地平線や水平線が見られるようになります。

小学校高学年くらいになると、見たものをそのまま描きたいと思う子どもが多くなり、写実的に描くことに興味を持ち始めます。しかしながら、テクニックを学ぶ機会は少ないので、物の重なりや奥行きの表現、立体的なモチーフなどを、実際に描ける子どもは、かなり少数です。

小学5年生の男の子。「奥行きのある絵を描きたい」と自ら希望し、初挑戦しました。

 

――いつ頃から絵のテクニックを教えてあげると良いでしょうか?

絵は自由に楽しむものですから、子どもから求められない限り、テクニックを教える必要はないと思います。お子さんが成長し、「写実的に描きたい」という気持ちが芽生えたら、テクニックを教えてあげても構いません。これより早い段階で、写実的に描くためのテクニックを無理に教えてしまうと、お絵かきが嫌いになってしまう可能性もありますので、注意が必要です。

そもそも絵には、「上手い、下手」「正解、不正解」もありませんし、写実的に描けるようになる必要もありません。アートは心のままに楽しむものですから、他者からの評価を気にすることなく、自由に表現させてあげましょう。

テクニックは、子どもが大きくなってからでも身につけることができます。現に、私も美術大学受験専門の予備校に行くまで、テクニックを学ぶ機会はありませんでしたが、それから勉強し、デザイナーになることが出来ました。

幼少期にテクニックばかり教えたり、親が口出しすることなく、アート活動そのものを自由に楽しめるよう、子どもの意思を尊重してあげることが大切です。それが子どもの創造力を引き出す鍵となります。

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